「でも、一流患者を目指せといっても、本当はそんなに難しいことではないのです。患者さん自身が主体性をもって、医者としっかり対話や交渉をすることです。それは、ビジネスシーンと同じこと。打合せや商談で、丸腰で相手のいいなりになる人はいませんよね」(同)

 では、具体的にどうすればアメリカの多くの患者さんのように一流患者になれるのだろう? そのノウハウや心得は、『一流患者と三流患者』のなかで詳しく述べられている。
 主だったところを抜き出してみてみよう。

・医者から治療方針を告げられたら、必ずその根拠と他の選択肢を尋ねる
・薬を飲む際も、必ず根拠を尋ねる
・医者にいわれたことを鵜呑みにしない。自分で調べるクセをつける
・家族や友人などに付き添いを頼み、一人では病院へ行かない
・診察室の会話は必ず録音する
……etc.

 といった、誰にでもできるようなシンプルなノウハウだ。
 それでも、がんといった大きな病気にかかってしまうと、ついつい医者に「それでお願いします」「わかりました、がんばります」と答えてしまうもの。だからこそ、今病気であっても病気でなくても、誰もが「一流患者の道」を歩み出すべきなのだろう。
 ちょっとした風邪で医者にかかったとき、「他の病気は考えられないでしょうか?」と尋ねてみるなど、今から「主体的な患者(=一流患者)」になるためのレッスンをはじめたい。

 アメリカでは「ペイシェント・エンパワーメント」という言葉が浸透してきている。これは、「患者力、患者さん自身の力こそが、医者から最高の医療を引き出せる」ということを指す。いっぽう、日本ではまだまだ「病院ランキング」に頼ったり、「スゴ腕医師」を探し出すことだけに躍起になってしまう。
 そんな「ブランド」に頼るのではなく、今やもう「自身の“患者ランキング”を問うべき時代」――が到来しようとしている。

上野直人(うえの・なおと)
1964年、京都府生まれ。和歌山県立医科大学卒業。ピッツバーグ大学付属病院にて一般内科研修後、米国内科専門医取得。米国一のがんセンターといわれるテキサス大学MDアンダーソンがんセンターに就職し、腫瘍内科医として研究、臨床に携わる。米国腫瘍内科専門医取得後、MDアンダーソンがんセンター助教授を経て、現在は同教授(永代教授)。腫瘍分子細胞学博士(Ph.D.)。専門は、乳がん、分子標的療法開発。標準的な治療方法の確立から、新しい分子標的および遺伝子治療の開発まで、がん治療の先端を担う。がんの治療効果を最大にするために必要かつ最適とされるチーム医療の推進にも力を入れ、日本でも医療従事者と患者向けの教育活動を行う。著書に『最高の医療をうけるための患者学』(講談社)がある

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