錦織圭は再び悔しい準優勝に終わった。
グランドスラム4大会に次ぐ格付けのマスターズ大会での決勝進出は、2年前のマドリード大会に次ぎ2度目のこと。前回は、元世界王者のラファエル・ナダル(スペイン)を相手にセットオールに戻したところで途中棄権に終わった。ナダルのコーチ、トニー・ナダルが「ラファは負けていた」と振り返った内容だっただけに悔しい思い出だが、今回の悔しさはより前向きだったように思う。
初のマスターズ・タイトルの前に立ちはだかったのは、現王者ノバク・ジョコビッチ(セルビア)。押しも押されもしないナンバーワンという相手は、向かっていく錦織にはむしろ歓迎だった。追われるより、追いかける立場で120%の力を発揮するタイプだ。
トスに勝ってレシーブを選択して始まった第1セット、第1ゲームの15-0から4ポイント連取でいきなり相手のサービスをブレークした。しかも、長いラリー戦を制して2ポイントを奪ったが、そこからが厚い壁だった。ジョコビッチは昨年、グランドスラムの3大会を制し出場したマスターズ8大会で優勝6度、準優勝2度――これまでは、ナダル、ロジャー・フェデラー(スイス)、アンディ・マレー(イギリス)とともに3強あるいは4強と言われてきたが、いま、完全に1強時代を築き上げている。ショットは強く深くスキがなく、自信に溢れたメリハリの効いた攻撃を仕掛けて来る。ブレークしてはブレークバックされる、これが2度繰り返され、錦織は少しずつミスが増えて第1セットを奪われた。