震災から5年。被災者の中にはすでに前向きに生活している人もいれば、まだそのつらさから抜け出せない人もいる。大きなショックを受けた人は、その後日常的な出来事を送るだけで疲れてしまい、なかなか回復に至らないケースに陥ることもあるという。
そのような人へのヒントを、『自衛隊メンタル教官が教えてきた 自信がある人に変わるたった1つの方法』の著者、下園壮太氏に聞いた。
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震災のショックからなかなか立ち直れない人は、「震災でなぜ自衛官はPTSDにならなかったのか?」でお話ししたように、2段階の疲労状態から抜け出せないサイクルに陥っている可能性があります。
被災後1年ほどは、あわただしく変わる環境への対応に必死で、アドレナリンを全開にして頑張ったと思います。この時期は本来感じるべきショックや疲れを感じずに生活できます。しかし、仮設住宅に入り、生活が何とか落ち着いたころに、これまでの疲れが表面に出てくるのです。
まだ十分にエネルギーがたまっていない状態での活動は、日常的なストレスを2倍に感じてしまうため、回復が難しくなります。
これは、うつ状態のリハビリ期のジレンマと同じ構造です。回復したいのに、活動すると少しのことで疲れてしまう。傷ついてしまう。回復と落ち込みが拮抗(きっこう)してしまうため、その状態からなかなか抜け出せないのです。
■自信を失ってしまっている
うつのリハビリ期も、震災を引きずるのも、ポイントは「自信の喪失」にあります。
私は、自信を3つに分けています。まず、何らかの課題ができるようになる「“できる”という自信」、第1の自信です。第2の自信は「自分の体力や生き方に対する自信」。第3の自信は「守ってくれる仲間がいる、愛されている、必要とされている自信」です。