医師の仕事は失敗したら患者の命を奪うこともあるし、技量が低ければ重篤な後遺症となることも。面接担当者は受験生が、医師という仕事の重責を自覚したうえでめげずにやっていけるか、その覚悟、本気を見たいのです。

 それでも多くの受験生は、なかなか志望理由をうまく話せません。そこで「面接の質問内容5分類」の、(2)その大学の志望理由、(3)医療トピックス、(4)社会トピックス、(5)個人プロフィルが問われるのです。

 (2)で聞かれているのは、その地域の医療に貢献する「覚悟」があるか。次が(3)と(4)で、医療や世の中の話題から問題点を絞り込み、自分の意見が言えるか、「勇気」が試されます。それも難しいとなると(5)の質問になるわけですが、ここで求められているのは自己紹介ではなく「自己分析能力」です。しかし、多くの受験生は質問の本当の意図に気づかないため、「面接で聞かれたのは、個人的なことばかりだった」という記憶が残るのです。

 詰まるところ、面接と小論文で本当に必要なのは「コミュニケーション能力」です。話し上手という意味ではありませんよ。臨床の現場では、患者との会話や検査結果などから情報収集し、問題を効率的かつ適切に解決しなくてはなりません。どんな場面でも物事の奥にある真意や理由を把握して解決する「問題解決能力」が、本当の意味でのコミュニケーション能力です。

 夢や憧れだけで受験勉強を続けるのは大変です。医師になりたい気持ちは自信や自負心から生まれるものなので、面接と小論文の対策を通して志望理由を明確にすることは、モチベーションの維持・向上にもつながります。

(構成・岡野彩子)

※AERA Premium『医学部がわかる』(AERAムック)より

広川 徹(ひろかわ・とおる)
河合塾小論文科専任講師。医学系小論文の中心講師として、長年にわたり医学部進学指導の最前線に立つ。医・自然科学系小論文のテキストや「全統論文模試」などの作成チーフとして活躍。医療に関する知識を体系化し、効果的に表現する授業は、塾生からの信頼も厚い

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