干支で年を表すのは日本独特の風習ではなく、もともとは古代中国で、アジアやロシアなどに伝わって行ったらしい。ちなみに正確にいえば、12年に一度同じ干支が巡ってくるのではなく、60年に一度であり、今年は「丙申」という年となる。
●「申」=「猿」ではない
「丙申」は「ひのえさる」と読む。実は私たちは干支を動物で覚えているが、これは庶民が覚えやすいようにと、12の動物を文字に当てたものらしい。なので「申」は猿とは同義ではない。「申」はもともと稲妻を表す象形だった。これに色々な偏がついて、例えばにんべんがつくと「伸」になるし、しめすへんがつくと「神」になる。つまり、「申」はちょっと神がかり的な意味合いを持っている象形といえる。
また、2015年の「未(ヒツジ)」は普通に読めば、「み」であり、「まだ」に近い漢字だ。というわけで、「未」と「申」は2つ一緒にされることが多い。「未申」の方角は、「こん」と呼ばれ「坤」と書く。裏鬼門と言われ、注意が必要とされている方角である。また、申年は未の次で、「物事が熟す(赤くなる)年」と言われ、西暦では12で割り切れる年、オリンピックも開催されている。
●豊臣秀吉は申年生まれ
「壬申の乱」のように干支の名前を冠した有名な乱もあるが、「申年」には大きな出来事が起こることが多いらしい。まぁ、探せば毎年大きな何かはあるのだろうが。ちなみに、60年前日本でテレビ放送が始まり、120年前オリンピックが始まり、240年前アメリカ合衆国は独立した。
俗説によれば、丙申生まれ(つまり2016年に還暦)の人は「赤猿や火猿と言われ、欲深く、我も強い。大望を抱くが実現するための勇気に欠けている」のだそうだ。なお、有名な丙申生まれ人に豊臣秀吉がいる(翌年生まれという説もある)。この人の人となりから、丙申生まれの性格付けがなされたのではないかと思うほどである(驚いたことに竹中直人さんも丙申!)。
ということで、来年60歳を迎える人ほど、赤いちゃんちゃんこがふさわしい人はいないということだ。
なにより「赤」は「申年」の象徴とも言える。若い人には記憶がないかもしれないが、12年前「赤い下着ブーム」があった。「申年の申の日に赤い下着を贈られると健康に過ごせる」という言い伝えが、全国各地に残されているのだそうだ。病気の殿さまが紫のはちまきを巻いているのと同様に、赤いふんどしで元気に乾布摩擦をするおじいちゃんの姿を、昔は時代劇でよく見た。
●「申」=「赤」の言い伝え
ワコールが今年実施したアンケートによれば、「申赤と赤い下着に関する言い伝え」は4人に1人が知っているとの結果がでたそうだ。25パーセントは決して多い数字じゃないぞー。だが、12年前、スーパーやデパートから赤い下着は一斉に消えた。売り切れたのだ。巣鴨のマルジさんだけにしか置いてないと、ずいぶんテレビでも放送していた。
告白すると、私の母も巣鴨に出かけ大量に購入していた。以来申年に関係なく、東京に来ると巣鴨で買い求めている。「本当に調子いいのよー」という。
プラシーボ効果だろー、と思っていたが、驚いたことに、イタリアや中国にも元旦に赤い下着をつける風習があるらしい。イタリアでは赤は「エネルギーの源、炎、情熱、力と成功」を意味する色、中国では「魔除け」を意味する色とされているのだ。
「丙申」の「申」が赤を意味し、「丙」が火を意味するのだとしたら、「丙申」は60年のうちでも「一番燃える赤」の年とも言える。
さてさて、2016年いったい何が起こるのやら。「未年」に完結できなかった「何か」が燃えるのか? あぁ、ちなみに富士山の過去の噴火は分かっている限りの分は「申年」でない、念のため。
『東京のパワースポットを歩く』より抜粋