

近年急増している外国人旅行者。政府の発表によると、2014年の訪日客は、前年度比29.4%、1341万人。2015年は、10月末現在で1631万人と、すでに前年を大きく上回っている。東京や大阪などの都市部では、もはやホテルは供給不足気味だという。さらに、2020年の東京五輪に向けてホテル需要は増す一方だ。政府が2012年に策定した「観光立国推進基本計画」によれば、2020年の訪日客を2500万人と見込んでいる。みずほ総研は、2020年東京を含む関東で6395室、近畿では1万9711 室が不足するだろうと試算している。
その打開策として浮上してきたのが、一般家庭やマンションの空き室を宿泊施設として利用する「民泊」。その旗手として注目されているのがAirbnb(エアビーアンドビー)だ。
Airbnbは、空き部屋を持つ「ホスト」と宿泊場所を探す「ゲスト」をつなぐインターネット上のプラットホーム。2008年サンフランシスコで創業され、現在は世界190カ国200万軒件以上の物件が登録されている。ここ数年、日本でも広まりつつある。
アメリカ・サンフランシスコ創業のAirbnb社が提供するこのサービス、旅館業法的にはどうなのだろうか。日本の旅館業法では「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」を旅館業と定義しており、消防や衛生面、フロントの設置などクリアしなければいけない基準は多い。それを満たしていないので、現状ではかなり濃い色のグレーといえる。「個人宅を貸し出しているので営業ではない」という見方もある一方、賃貸物件の場合、大家に無断でのまた貸しということで民法に抵触する可能性もある。
こういった問題はあるものの、政府は東京五輪に向けたホテル不足の打開策として、Airbnbをはじめとする「民泊」に期待を寄せている。2015年10月20日の「国家戦略特別区域諮問会議」で、東京など一部区域における旅館業法の規制緩和が発表された。これを受け、羽田空港に近く、すでにホテル不足が顕在化している大田区では、新たに条例を設け、早ければ来年1月から「民泊」を認める見通しだ。
しかし一方で、近隣住民とのトラブルも増加している。11月には京都のマンションで中国人旅行者を相手に無許可で「民泊」を営業していた業者が家宅捜索を受ける事件も発生した。