「年とともに大泣きができなくなった」
彼は、泣きたくて映画を観に行くらしい。
「どの映画を観るか」考える時に、「どの映画が泣けるか」で、考えるらしい。
彼が言うには、
「自分の心が震えないのに、人の心を震えさせるものが作れるはずない」
確かにその通り。
わたしだって同じ。
人に感動してもらいたい。人の感動を創りたい。
いつもそう思っている。
なのに、自分自身がかつてほど泣けなくなっている。
だから、時々思う。
「思いっきり、切ない恋がしたい」
「思いっきり、泣いてみたい」
でも、一方で、
「今さら、そんな恋をしている場合じゃないよなあ」
「思いっきり泣くほどの不幸は嫌だよなあ」
という声がささやく。
だから、真剣に恋して悩んで泣けるメンバーを「うらやましいな」と、思うことがある。
それでも、心のどこかで、
「感動して涙を流さない自分になりたくない」
と、ひとりでこっそり思いっきり泣けそうな本を読んでみたり、DVDを見たりしているわたしがいる。