のと鉄道の穴水―七尾間を走る「のと里山里海号」。深みがある「日本海ブルー」にえんじ色のラインが入っている
のと鉄道の穴水―七尾間を走る「のと里山里海号」。深みがある「日本海ブルー」にえんじ色のラインが入っている
車内では沿線出身のパティシエ、辻口博啓氏のスイーツも楽しめる
車内では沿線出身のパティシエ、辻口博啓氏のスイーツも楽しめる
里山車両(NT301)のシートはオレンジ色。輪島塗や珠洲焼といった伝統工芸品が展示されたミニギャラリーもある
里山車両(NT301)のシートはオレンジ色。輪島塗や珠洲焼といった伝統工芸品が展示されたミニギャラリーもある
能登中島駅で一時停車し、全国で2両しか残っていない鉄道郵便車「オユ10」を見学する
能登中島駅で一時停車し、全国で2両しか残っていない鉄道郵便車「オユ10」を見学する
沿線のビュースポットでは、停車や徐行運転で景色が楽しめる。写真は深浦漁港
沿線のビュースポットでは、停車や徐行運転で景色が楽しめる。写真は深浦漁港

 2015年3月に北陸新幹線が開業し、首都圏からのアクセスが格段に便利になった加賀百万石の城下町、金沢。今年のシルバーウィークは5連休ということもあり、金沢への旅行を予定している人も多いだろう。そんな金沢市から電車や車で約1時間の場所を走る観光列車が話題となっている。

【のと里山里海号フォトギャラリー】

 石川・能登半島の七尾市から穴水町までを走る、のと鉄道の観光列車「のと里山里海号」は、穏やかで美しい七尾湾の風景を見ながら、車内で特別なスイーツを味わえる。そのスイーツを手がけるのが、七尾市出身で、NHK朝ドラ「まれ」の製菓指導を行うパティシエ・辻口博啓さんだ。

 七尾市は筆者のふるさとでもあり、日本海に面した和倉温泉が有名だ。子どものころから通学などでお世話になってきたのと鉄道の観光列車とは、どのようなものなのか。8月中旬、帰省がてら、夫と娘(2)を連れて乗ってみることにした。

 のと里山里海号が走るのは、七尾―穴水駅間の33.1キロ。伝統工芸品を随所に散りばめた車両には専任アテンダントが乗車し、沿線のガイドなどで乗客をもてなしてくれる。

 車両検査が行われる水曜と夏休み(8月31日まで)を除く平日は、普通列車に連結して運行されるが、土、日、祝日、夏休みなどは、1日5本、普通列車の倍近くの約70分をかける「ゆったりコース」(大人1500円、子ども1000円)が運行される。今回は、七尾駅午前9時1分発、車内で能登の素材にこだわった辻口さん特製のスイーツが提供される、ゆったりコースの「スイーツプラン」(大人3000円、子ども2500円)に乗車してみることにした。

 当日、七尾駅には、「日本海ブルー」(濃紺色)にえんじ色のラインが入った渋い色合いの列車が停まっていた。列車は、オレンジ色のシートの「里山車両」(NT301)とシートが青色の「里海車両」(NT302)の2両で構成。各車両には海側を臨む展望シートやボックス席などがあり、それぞれ約40人が乗車できる。

 シートには能登上布をかぶせ、パーテーションは田鶴浜建具の組子と輪島塗、ミニギャラリーには輪島塗や珠洲焼を展示、というふうに、随所に能登の伝統工芸品や名産品が散りばめられ、しょうしゃな雰囲気をつくり出している。

 走り始めて間もなく、お目当てのスイーツが運ばれてきた。内容は、能登大納言小豆と能登ミルククリームを包んだ「辻口ロール 能登大納言」、石川県産のいちごを使った「マカロン いちご」、珠洲(すず)の天然塩で作った「塩サブレ」。これにドリンク、さらには持ち帰り用の限定スイーツセットがつく。

 さっそく食べてみる。ロールケーキは、能登ミルクの素朴な甘さを生かした上品な味わい、マカロンは可愛らしい味だ。塩サブレには、昆布が練り込まれており、サクサク、プチプチとした食感がおもしろい。娘は塩サブレが好みらしく、無言で私の分に手を伸ばす。大人げなくスイーツを取り合ううちに、列車は能登中島駅で停車した。

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