■「送骨」の現状は?
2010年代以降、身寄りのない高齢者の孤独死が社会問題として取り上げられるようになり、埋葬する墓のない遺骨が大法寺には次々と届いている。栗原住職も知らないうちに、「送骨.com」なるホームページが立ち上がり、「送骨を受け付けるお寺一覧」として16の寺・霊園などの情報が並んでいる。価格は1万9440円から9万円までで、表記がない団体もある。一見すると最安値を競うネット販売のような印象を与えかねない。しかし、「少ない負担で遺骨を供養してほしい」というニーズは多いのだ。
「『送骨』は大法寺の専売特許ではありませんので、まねをしてくださって結構。われわれのできることは限りがあります。全国で同じような取り組みをしてくださる寺が増えることは当然の流れかもしれませんね」
栗原住職が痛切に思うのは、孤独死や「送骨」が“悲惨の極み”ではないということである。
「お骨にする段階で手続きができない場合があります。死亡届は自宅で亡くなった場合、親族か同居者が出すでしょう。医療機関や介護施設、賃貸物件ならば、その施設の管理者や代表者が手続きをすることができます。しかし、自宅で孤独死した場合、親族や同居者が不在ですと、われわれが運営するNPO法人では代行できません」
次のようなケースが考えられる。親族はいても絶縁状態で、双方ともかかわりを拒絶していたり、認知症や精神性の疾患を抱えていたりすると、死亡届や遺体の火葬や埋葬の許可申請ができないのである。一連の業務を法律の専門家に委託する経済力がなく、介護施設などに入っておらず、持ち家があるため生活保護も受けられない……。終活の質は、金と縁に左右されるが、その両方を築くことができないまま死を迎える人がいるのだ。
「この記事を読んだだれかが、『大法寺にお願いしたい』と思うかもしれません。でも遺骨になってから歩いて行くわけにはいかない。死亡した後、火葬して遺骨になるまでの手続きをだれに託すのでしょう。お金を払って専門家に頼むか? 生前に縁を築いておいてお願いするか? 元気なうちから準備をしておいてください」
死に方は選べないが、生き方は、きょうからでも変えられる……ということだろう。
(ライター・若林朋子)