サンセルフホテルの客室。
<br />Photo by Yuji Ito
サンセルフホテルの客室。
Photo by Yuji Ito
カーテンや備品など客室内部は全てホテルマンが考えしつらえた。手づくりのものも随所に。
<br />Photo by Yuji Ito
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カーテンや備品など客室内部は全てホテルマンが考えしつらえた。手づくりのものも随所に。
Photo by Yuji Ito
団地の見所を巡りながら、ワゴンに載せた太陽光発電キットで蓄電する団地ツアー。
<br />Photo by Yuji Ito
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団地の見所を巡りながら、ワゴンに載せた太陽光発電キットで蓄電する団地ツアー。
Photo by Yuji Ito
団地の夜空に浮かぶ「夜の太陽」。昼間蓄電された電気で夜の団地をやさしく照らす。
団地の夜空に浮かぶ「夜の太陽」。昼間蓄電された電気で夜の団地をやさしく照らす。

 東日本大震災以降、存在感を増している再生可能エネルギー(以下、再生エネ)。特に、日本全国で急速に導入が進んでいる太陽光発電は導入までのリードタイムが短く、また投資コストが低く抑えられるため、企業だけでなく個人や、さらに地方自治体、地域コミュニティでの取り組みも急速に広がっている。

 たとえば茨城県取手市で2013年4月以降、年2回ペースで行われている宿泊型アートイベント「サンセルフホテル」。取手市・同市民・東京藝術大学の3者が共同で行っている「取手アートプロジェクト」(以下、TAP)のイベントの一環で、日中に太陽光で発電した電気を蓄電し、それを使いながら一夜を過ごすことで、「太陽と人間の関係」や「エネルギー」、「コミュニティのありよう」などについてゲスト(参加者=宿泊者)に体感してもらうのがこのイベントの狙いとなっている。

 今回は、9月13~14日に2組のゲストを迎えて開催された「サンセルフホテル」に参加し、その取組みを取材した。

* * *

「サンセルフホテル」は、「ホテル」とはいうものの、いわゆる「普通のホテル」ではない。どんな「ホテル」かというと、取手市にある築45年、総戸数2,166戸の大規模団地「井野団地」の空き部屋がそれ。

 井野団地では、多くの郊外型団地と同様、住民の高齢化やコミュニティの弱体化が問題となっていた。そこにTAPが同地域の人々とアーティストとの接点をつくり、新たな芸術表現とコミュニティの形を探る目的で、2010年より「アートのある団地」プロジェクトが開始された。「サンセルフホテル」は同プロジェクトのひとつで、地域コミュニティの活性化と太陽光発電の理解を深める、という二つの目的を持っている。

 ホテルマンは団地の住民が務め、客室づくりからアメニティグッズ、食事、ルームサービスに至るまで全てホテルマンの手づくり。ホテルは通年オープンしているわけではなく、年に2回、“営業”されるのみ。これは、客室で使う電気が太陽光で蓄電する電気だけとなるため、冷暖房の必要がない春と秋の気候の良い時期に限られるためだ。

 記者が取材したサンセルフホテルで過ごす1泊2日のタイムラインは以下の通り。

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