2014年9月27日に噴火した、長野県と岐阜県の県境にある御嶽山(3067メートル)。行楽シーズン、好天に恵まれた土曜とあって山頂付近には大勢の登山客がおり、噴石や火山灰の影響で多数の死傷者が出る大惨事となったが、救助活動は難航している。
実は、日本の火山の防災対策については、以前から火山学者の間で不満の声が上がっていた。一般には、地震研究と火山研究は同じようなものと考える人は少なくない。だが、その実態は大きく異なる。
日本火山学会の関係者はこう話す。
「日本は世界有数の火山国ですが、火山の防災対策は後進国と言わざるを得ない。地震と火山は同じように国の予算がついていると考えられているが、まったく違う。火山研究の予算はあまりに少なすぎる。このため、火山学者を目指そうという学生も少ないんです。国内にいる火山学者は40人程度では、観測体制も充実できません」
日本国内には活火山が110カ所、このうち「火山防災のために監視・観測体制の充実等が必要な火山」として火山噴火予知連絡会によって選定され、気象庁が24時間の常時観測対象としている火山が47カ所あるが、これを40人でカバーしなければならないというのだ。国内に約2000人もいる地震学者とは、歴然とした差がある。
また、文部科学省の研究予算にも大きな開きがある。地震と火山の予算が別々に発表されていた2008年のデータをみると、地震が約200億円、火山は約19億円(09年から合算で発表)。つまり、火山は地震の10分の1しか研究費がないのだ。火山の研究者は、冷や飯を食わされてきたと言っても過言ではない。
別の研究者からはこんな意見もある。
「火山の噴火は、数万年単位で研究する必要がある。いつも国内で噴火しているわけでもなく、発生する頻度が多い地震とは違って、火山は研究成果を出しにくい分野である。国立大学が独立法人化してから、火山研究の予算は減らされる一方だったんです」
さらに、地元と研究者の対立もある。火山がある地域には多くの温泉が湧き、風光明媚な観光地になっている所が多い。31ある日本の国立公園のうち、釧路湿原(北海道)や伊勢志摩(三重県)などを除いて、その多くに火山があるのだ。
「九州地方のある都市で、火山噴火のシンポジウムを開こうとしたら、地元の観光協会が横やりをいれてきたことがあった。観光にダメージが出るという意見でしたが、噴火のリスクを考えることは、防災問題です。そこは少し考え方を改めてほしい」(防災に詳しいジャーナリスト)
火山に詳しい別の研究者によれば、火山のちかくに地震計を取り付けようと地元に提案したら、景観が悪くなると猛反対された例もあったとか……。
日本は世界有数の火山国だが、研究体制も国民の意識も二流なのかもしれない。