ラクだなんてとんでもない。目の前にいない部下や同僚の仕事をどう把握し、情報共有し、成果を出すのか。高度なスキルが求められる働き方でもある。

 仕事柄、模索が続いている現場もある。

 旅行比較サイト「LINEトラベルjp」を運営するベンチャーリパブリック(東京都港区)では、2月27日から急遽、全従業員70人のテレワークを実施している。これまで二の足を踏んでいたのは、セキュリティー上の課題があったからだ。

■ペーパーレスがカギ

 同社のサイトは月間2700万人が訪問し、多くの個人情報を扱っている。データを攻撃から守るため、社外からアクセスできないようにしていた。しかし、このほど社員全員にVPN(仮想プライベートネットワーク)を配備し自宅など遠隔地からでも安全に社内ネットワークにアクセスできるようにした。

 ただ、財務部門では契約書が紙ベースのため、社判を押すために出社するケースも。同社広報の濱本愛さん(34)は「今後は順次電子化を検討していますが契約はどうしても相手がいることなので……」と難しさを語る。

 ペーパーレス化はテレワーク成功のカギでもある。アドビシステムズが3月4日に発表した調査でも、テレワーク中に紙書類の確認や捺印のため出社した経験があると答えた人が64.2%に上った。スムーズにテレワークに移行できない理由が、ここにある。

 エイベックス(東京都港区)でも、1500人の全社員を対象に「リモートワークを推奨」という対応をとった。

 同社人事総務本部の木村絵美さん(40)が、

「特に大きな課題は感じませんでした。段階的に準備をしてきたことが大きいですね」

 と言うように、3年前に本社移転をした際、ペーパーレス化を実施してきたことがプラスに働いた。会議資料もすべてオンラインで見られる。また、社内システムにも自宅などからアクセスできるようにするなどハード面も整備したこともあり、さまざまな業種がいる同社でも問題なくテレワークができた。(ライター・市岡ひかり

AERA 2020年3月23日号より抜粋

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