(2)不安は「数字」によって煽られるのだから、その対策は数字による不安を感じたら、何らかの比較の対象を求めることです。数字は単独だと冷静に評価しにくいので、日本ではインフルエンザで毎年2000人を越える人が亡くなっていることを知れば、「●日現在の死者数、●名」という数字の感じ方も変わります。
(3)(4)、不安は危険情報を欲しがり、口コミや身近な人の言動に影響を受けるのだから、対処法はネット検索の時間を制限する、危険情報に触れた場合は、安全な情報にも意図して触れる、不安情報を過剰に口にする人とは、やんわりと距離をおくことです。
■不安の一番の問題は、「優先順位」を誤ること
このような方法で不安を増大させないことは、「優先順位」を間違えないためにも大事なのです。
冷静なときは、人はさまざまな情報をフラットに判断できます。ところが「漠然とした不安」に飲み込まれている人は、ひとつの情報に飛びつき、そこだけに注目して対応してしまいます。だから、将来の経済、将来の家族、将来の生活の不安につながる情報に動揺し、トイレットペーパー確保に必死になってしまうのです。
おそらく、コロナウイルスの影響を冷静に考察すれば、長期的には「経済」が最も大きなテーマになるはずです。経営者はその意識を持っている人が多いと思いますが、そのほかの人も、冷静になって、そのことを考えるべきだと思います。このまま、経済活動を縮小してしまうと、マスクやトイレットペーパー不足にとどまらない影響が出てくると思います。
不安をいたずらに増幅させず、コロナ対策として自分や家族がやるべきことを決め、あとは淡々と普段通りの生活や仕事をする。そういう人が増えることが日本社会にとって大切だと私は考えます。
ただ、このような状態でも、私は日本人の力を信じています。災害とつきあい続けてきた長い歴史がある日本人は、不安の力をうまく活用できる民族だと思います。
今回の漠然とした不安をエネルギーに、感染症対策が国民生活に浸透しただけでなく、時差出勤による満員電車の解消、テレワークやインターネット環境の積極的活用などが促進されています。日本人は必ず、この状況と経済とのバランスをとり、乗り越えるものと信じています。