小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中
小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。『仕事と子育てが大変すぎてリアルに泣いているママたちへ!』(日経BP社)が発売中
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3月10日、新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で発言する安倍晋三首相 (c)朝日新聞社
3月10日、新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で発言する安倍晋三首相 (c)朝日新聞社

 タレントでエッセイストの小島慶子さんが「AERA」で連載する「幸複のススメ!」をお届けします。多くの原稿を抱え、夫と息子たちが住むオーストラリアと、仕事のある日本とを往復する小島さん。日々の暮らしの中から生まれる思いを綴ります。

【写真】新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で発言する安倍首相

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 東日本大震災から9年が経ちました。新型コロナウイルスの感染が拡大する中で迎えた3月11日。先の見えない今の不安をあの日に重ねた人も多かったのではないかと思います。

 非常時には、弱い立場の人が最初に追い込まれます。暮らしに余裕のない人たちは非常時に対応できる蓄えもありません。また、女性や子どもに対する暴力も深刻化します。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一斉休校措置でも、親が働いている間に家で一人になる子供たちが性犯罪に巻き込まれるリスクや、家庭で虐待を受けている子供たちの行き場がなくなることが懸念されています。

 今回の一連の措置は、不安定な雇用で働く人々やひとり親家庭、そして多くの共働き世帯を直撃するものです。現政権が、そうした人々の暮らしの実態をわかっていないことが露呈しました。しわ寄せの行く学童保育や保育園の職員の負担についても全く想像力が欠如しています。麻生太郎財務大臣は先月28日、学童保育の費用負担の政府補償に関する記者の質問に、愚弄するような態度で回答して批判されました。親たちの不安に応えようとする真摯な姿勢は微塵(みじん)も感じられません。

 育児や介護など主に女性が担ってきたケアワークを軽視し、人の暮らしの切実な需要に関心を払わないリーダーは、非常時に国民の生活と命に直結する判断を的確かつ迅速に下すことができないのです。

 折しも3月8日の国際女性デーに合わせてUNウィメンと列国議会同盟(IPU)が発表した報告では、全世界で女性閣僚の割合が21.3%と過去最高に達する中、日本は15.8%でG7最下位であることが判明。永田町と大手町しか見ていない政治家だけに任せていては、難局は乗り切れません。候補者男女均等法に罰則を設けて、女性政治家を早急に増やすべきです。

AERA 2020年3月23日号