陸山会事件における東京地検特捜部の検事による虚偽報告書問題について、6月4日に退任した小川敏夫前法相は会見で「指揮権の発動を決意した」と発言した。これに対し、大手メディアは「軽々しい」「政治的介入だ」と一斉に集中砲火を浴びせた。この発言の真意は何だったのか。ジャーナリストの江川紹子氏が、小川氏を直撃した。
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個別の事件への法相の指揮権発動は、1954年の造船疑獄事件の一例にとどまり、以後はほとんどタブー扱いが続いている。元判事であり検事経験もある小川氏自身も、発言が議論を呼ぶことは分かっていたはずだ。その真意を開いてみたくて、インタビューを申し込んだ。
その日のうちに取材に応じた小川氏は、こう言った。
「マスコミはまったく想像で書いている。起訴命令のようなものを想定しているみたいだけど、そんなこと、考えるはずないじゃありませんか。しかし、『厳正にやれ』という趣旨のことは言えるんです」
指揮権を発動せず、人事上の処分で対応することも考えた。だが、「記憶の混同」による検事一人のミス、という筋書きに立てば、上司らの責任を問うことは難しい。やはり、指揮権発動しかないと腹を固めたという。
「検察が身内の問題に問して、裁判所からも指摘があるのに頬っかむりでいいのか。それを法務大臣が見過ごしていていいのか。そういうことなんですよ」
今回、小川氏を非難したメディアは、それでいいというのだろうか。
※週刊朝日2012年6月22日号
