リーマン・ショック後の09年4月、政府は経済危機対策として15兆4千億円の国費を投じた。井上さんは今回、これを上回る60兆円以上が必要で、消費減税と現金給付の両輪が不可欠と訴える。

 様々な自粛の影響で収入が途絶えた人たちは、生活を続けるのに必要な現金すら十分手元にない状態に置かれている。そうした人たちには減税措置だけでは助けにならない。消費喚起には家計を支える現金の一律給付がベスト、というわけだ。

「3、4月で1人10万円ずつ。あるいは4月に限定して20万円でもいい。期間限定でベーシックインカム的な支給をすることが、人々の生活の安定と景気回復の両方に効果が期待できる局面だと思います」(井上さん)

 すべての国民に無条件で一定額の現金を支給するには、「財源をどうするか」という難題がある。前出の森永さんは言う。

「日本銀行が貨幣を大量発行することによって得られる通貨発行益を活用すれば、日本の財政は年間60兆円の財政出動を継続できる余力があることは、この7年間のアベノミクスによって証明済みです。60兆円あれば、国民1人あたり月額7万円程度を支給できます」

 そしてこう強調する。

「増税路線しか考えていない財務省を動かすのは政治の力です」

(編集部・渡辺豪)

AERA 2020年3月30日号より抜粋

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