「最悪のシナリオはずるずると感染者が増え、出口が見えないままイベントや外出の自粛が続くこと。思い切った対策をとらないと、本当に経済破綻してしまいます。ワクチンや治療薬の開発は早くても年末と言われていますが、それまで日本経済はもちません」
駒沢大学の井上智洋准教授(45、マクロ経済学)は、今年1~3月期の国内総生産(GDP)が「年率換算でマイナス15%を超える」と予測する。内閣府が9日に発表した昨年10~12月期のGDPの2次速報は年率換算でマイナス7.1%。1~3月は新型ウイルスの悪影響も確実視されるためだ。
ただ、井上さんはこう留保する。
「GDPが年間を通じてどうなるかは、政府が自粛要請をいつ打ち切るのかに加え、今後の財政政策の中身によります」
感染拡大の状況にもよるが、かりに政府が3月いっぱいで自粛要請を打ち切れば、政策次第で経済の早期回復も見込まれる。しかしその場合も、大胆な財政出動がなければ二次的な被害が出てきてしまう、と井上さんは警告する。
「二次的被害とはイベントの中止や外出の自粛で収入を失った自営業者やフリーランスの人たちが、4月以降も支出を控える事態です。この人たちにお金が行き渡らない状況が続けば、収入減に陥る人がさらに拡大します。負の連鎖を早いうちに食い止めないといけない」
米国は17日、現金給付を含む総額1兆ドル(約107兆円)の景気刺激策を打ち出した。12日には自民党の若手議員らが30兆円規模の補正予算編成や消費税を一時0%にすることを求める提言を二階俊博幹事長に出した。だが現状、政府が検討している緊急経済対策は児童手当の上乗せ、キャッシュレス決済のポイント還元の拡充など10兆~20兆円規模とみられる。井上さんは言う。
「リーマン・ショックは米国が震源だったのに、日本の景気の落ち込みのほうがひどかった。日本がデフレ不況から脱却できていないせいもありますが、財政金融政策が十分ではなかったのが主因。今回も各国が大胆な財政金融政策に乗り出す中、日本は立ち遅れています」