佐藤教授は、新型ウイルスの拡大で練習拠点などが閉鎖されている現状にも警鐘を鳴らす。

「日頃車いすで生活する選手などは、意識的に体を動かさないと筋肉や心肺機能が落ちていく恐れもある。選手の練習環境を整えることが必要です」

 延期が決まった24日までに、国内では五輪で104人、パラで46人の選手が日本代表に内定している。

 現時点で「最強」の代表選手は、1年後にも最強なのか。2018年9月に日本オリンピック委員会(JOC)が決定した東京五輪の日本選手団編成方針には「日本代表選手は、当該競技団体から推薦され、活躍が大いに期待できる者の中から選考」とあるだけで、具体的な選考基準は明記されていない。

 卓球や陸上のマラソンなどは、競技団体が再選考は行わない方針を明らかにした。一方で、14階級中13階級で代表が内定していた柔道では代表の再選考を行う可能性が浮上。柔道男子60キロ級に内定している高藤直寿(26)=パーク24=は24日、自身のツイッターでこうつぶやいた。

「代表選考やり直しとかなったら流石に無理だろ。単純に一度決まった選手と決めれなかった選手が試合するのはメンタル面でアンフェアだし。先に内定もらったのが不利になるのはおかしいし、スポーツはフェアであって欲しい」(原文ママ)

 JOC常務理事で、早稲田大学の友添秀則教授(スポーツ倫理学)は言う。

「公平や公正はスポーツにおいて核となるもの。正式なルールで代表に決まったのに、出場できないのは望ましくないし、(日本がボイコットした)1980年のモスクワ五輪の幻のオリンピアンのようにその後も長く心にしこりが残ってしまう」

 しかし、1年後に最高のパフォーマンスを発揮できる選手は変わる可能性があることから、

「すべての競技の選手選考を改めて行い選手を決定するのがいいのではないか。ただ、今の内定選手の参加可能性を残し、IOCは参加選手数の上限(五輪は1万500人、パラは4200人)を今回に限り撤廃することも考えるべきだ」

(文中一部敬称略)(編集部・大平誠、深澤友紀)

AERA 2020年4月6日号より抜粋

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