50年に及ぶ格闘人生を終え、ようやく手にした「何もしない毎日」に喜んでいたのも束の間、突然患った大病を乗り越えて、カムバックを果たした天龍源一郎さん。2月2日に迎えた70歳という節目の年に、いま天龍さんが伝えたいこととは? 今回は「生涯現役」をテーマに、飄々と明るく、つれづれに語ります。
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生涯現役なんていう言葉があるけど俺はずっと現役でプロレスをやれるもんだって気概や自惚れがあった。それがある時、自分で自分の事が嫌になったんだ。モタモタしている俺とか、「こんなの天龍源一郎じゃない!」って。それで、プロレスを辞めようってところに自然と行き着いたんだと思う。
手を変え品を変え、キャリアどうのこうのじゃなくて、「天龍源一郎として、俺、頑張れていた?」ということをものすごい気にしだしていたね。そうなったら意外と考えは短絡的で、こんなにモタモタしている俺なら「すっぱりと辞めよう!」って。
以前だったら、試合が終わった後「なんか源ちゃん、今日元気なかったね」とか、後援者や仲間の人たちとの飲み会の席で言われても、「何言ってんだよ!俺はいつもの天龍だよ!」と突っ張る俺がいたのに。逆に俺のほうから「今日、どうだった?」って聞いていたし、それと同時に「今日は全く冴えなかったな」と感じている俺もいて、「もう、退こう」と思った。
思い立ったら決断は早いんだよね。話があるからって女房と娘に声をかけて「もう辞めようと思う……」と打ち明けた。それまでは、どんなになっても頑張ろうって思う俺がいたのに糸が切れたっていうか、これ以上頑張り切れないよっていう俺になったのが正直なところだよ(笑)。
相撲界を離れるときも、思い立ったら決断は早かったな。でも、相撲のときの方がまさか辞める日が来るなんてと思ったね。
当時、輪島さんとか若貴兄弟のお父さんの貴ノ花とか、増位山とか、俺より後輩のやつらが皆、横綱とか大関になっていくんだけど、「負けるもんか!」って思って頑張っていた。自分を通り越して下の奴らがスイスイ出世していっても、俺は俺の歩幅で歩んでいけばいいと思っていた。だから、辞めるとかそんなことは何にも考えなかった。
やれるところまでやろう、ただひたすら頑張ろうと思っていたな。