新型コロナウイルス拡大の影響で開幕が遅れている。未だシーズンが始まる時期が不透明な状況だが、開幕前の時期にファンが最も楽しみにしていることの一つに、飛躍が期待される若手の成長がある。
だがプロの世界は厳しく、どんなに実力があり期待されようとも、どの若手プレイヤーも必ずと言っていいほどぶつかるのがプロの壁。その壁を破れず苦しむプレイヤーは多く、結果が出るまでに時間がかかることもあるが、選手たちの覚醒を後押しするため、時に指揮官たちに必要となってくるのが「我慢の采配」である。
我慢の采配が生んだスター選手といえば、昨季10代歴代最多のシーズン36本塁打を記録し、新人王に輝いた村上宗隆(ヤクルト)を思い浮かべる人も多いだろう。
前年までは清宮世代の“その他大勢”の一人だったが、本塁打記録をはじめ、10代最多の96打点、オールスターで史上初の10代三塁手部門ファン投票選出など、次々に10代記録を塗り替え、今では“村上・清宮世代”と呼ばれるようになった。
だが、本塁打を量産する一方で、打率は2割3分1厘にとどまり、日本人最多のシーズン184三振と粗っぽさも目立った。
にもかかわらず、小川淳司前監督は「三振を気にして、持ち味が消えてしまっては意味がない」と、どんなに三振の山を築いても、我慢強く使い続けた。村上自身も、「(打撃の記録を作れたのも)試合に出してくださった監督がいたから」と感謝を忘れない。
その小川監督だが、シーズン途中で監督代行に就任した10年にも、当時2軍でくすぶっていた畠山和洋を主軸に抜擢。同年、畠山は自身初の二桁本塁打を記録し、和製大砲として開眼したのは周知のとおりだ。
さらに小川監督は昨季、村上とともに4年目の廣岡大志を開幕スタメン起用。開幕から41打席連続無安打というプロ野球ワースト記録をつくっても、辛抱強く使い続けた。長いトンネルを脱した廣岡は、最終的に自身初の二桁本塁打を記録した。
これらの我慢の采配は、実は、小川監督の選手時代の体験が原点となっている。