北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表
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イラスト/田房永子
イラスト/田房永子

 作家・北原みのり氏の週刊朝日連載「ニッポンスッポンポンNEO」。今回は、新型コロナウイルス感染拡大をめぐる韓国と台湾の対策と日本の違いについて。

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 韓国と台湾の状況をみていて、いったいこの違いは何だろうと考えさせられる。

 私の会社は台湾とのやりとりが多い。担当者とのチャットのやりとりを振り返ると、1月30日に「みのりはマスクは持っているか?」「日本人はなぜまだ満員電車に乗ってるのか?」とかなり強い調子で心配してくれているのがわかる。台湾で最初の感染者が出たのは1月21日だ。マスクが国民全員に行き渡るよう、台湾当局は迅速に動いていた。

 その担当者が2月上旬に来日する機会があった。彼女は地下鉄に乗るときにはマスクを2枚し、会社に着いたとたん「手を洗わせて」と洗面所を使い、すべてのドアノブを素手で触らないよう注意していた。服の裾をのばしてドアを開ける彼女に、正直「そこまで?」と私は思ったものだ。日本でも1月15日に神奈川県で初めての感染者が出ている。台湾よりも6日も早いのに、社会の危機感はゼロに等しかったと思う。

 台湾は今、国内の感染者が激減し、街は平常運転だ。海外からの帰国者は14日間自宅に待機させられるが、この間、行政が必要な買い物を代行してくれるという。しかも待機後に慰謝料として、また社会に協力した感謝として約5万円が支払われる。ちなみに日本の場合、入国者は2週間待機させられるが、その間のホテル代は自費だ。

 韓国で初めての感染者が出たのは1月20日。日本より5日も遅い。その後、感染者は急増するが、それは政府がPCR検査の制度をすぐに整えたからにほかならない。また集会の禁止もすぐに周知させている。1992年からソウルの日本大使館前で毎週水曜日に行われている「慰安婦」女性たちへの謝罪と賠償を求める「水曜デモ」も、2月からオンラインデモに切り替わった。日本と同様、韓国の経済も相当な打撃を受けてはいるが、自営業者や中小企業対象に減税対策を行い、富裕層を除く国民の7割に一律に給付金が支給されている(4人家族で約9万円)。今、街にはマスクが普通に売られ、感染者も減少傾向にあるのだ。

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