同コースには外国人生徒や帰国生徒が多いが、英語力を身に付けた国際経験のない生徒もいる。27人の外国人教員が在籍し、数学や世界史など主要科目は全て英語で授業をする。授業の進め方も、外国のように発表や議論など生徒が主体的に参加する形式が主だ。

 同コースの植松久恵統括長は、海外進学へのモチベーションを高めているのは「海外大学の情報提供」だと指摘する。毎年春休みに希望者15~20人程度を米国のカリフォルニア州やボストン市に連れていき、10校前後の大学を回る。現地の大学担当者から、求める学生像や奨学金情報など知りたい情報を直接聞く。

 また、毎年200校以上の海外大の担当者が同校を訪れ、説明する機会がある。海外大が170校以上参加する「海外大学フェア」も同校で開催している。

「『小さな大学がいいと感じた』『寮の雰囲気がいい』など、訪れて初めてわかることが多い。また、大学の説明を聞けば、『あそこに行きたい、学びたい』と夢が膨らむ。海外大のほうが合う生徒はいる。そうした生徒が第1志望の大学へ行けるように取り組んでいます」(植松統括長)

 2位に沖縄尚学(沖縄)が63人、3位に郁文館グローバル(東京)が62人と私立が続いたが、その中で際立つのが61人の合格者を出した都立国際だ。

 米村珠子校長は合格者の多さについて「海外からの帰国生徒や外国人生徒の存在が大きい」とみる。全校生徒約720人中、帰国生徒や外国人生徒が約3分の1を占める。米国やカナダ、中国、ドイツなど約40カ国・地域から集まっており、「日本にいながら異文化体験ができる」と言われるほどだ。

 また、国際バカロレアコースの生徒も合格実績を上げている。国際バカロレアとは、国際バカロレア機構(本部スイス・ジュネーブ)が提供する国際的な教育プログラムのこと。日本語のプログラムもあるが、同校は英語で実施する。公立校では唯一だ。一定の成績を修める必要があるが、多くの海外大で入学資格として認められている。

 同コース以外の生徒への進学指導も充実している。海外大で求められる英語検定試験のTOEFLや米大学進学適性試験(SAT)の対策講座を設けているほか、進学説明会や、出願時に必要とされる論文の指導などを実施している。

「英語が好きで、国際的に活躍する仕事に興味がある生徒が集まってきている。特に国際バカロレアコースは倍率が高く、人気があります」(米村校長)

 公立ではその他、国際情報(新潟)が合格者31人、横浜サイエンスフロンティア(神奈川)が同14人を出している。かつてはインターナショナルスクールや一部私立高校から海外大を狙う動きが主流だったが、今は各地で海外進学を目指す動きが見られる。(本誌・吉崎洋夫、緒方麦)

週刊朝日  2020年5月1日号より抜粋

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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