「この調査によってもさまざまなことがわかりましたが、やはり臨床研修病院によって、漢方教育には温度差がありました。研修医は、漢方医学の必要性を実感しながらも、卒前に比べると、漢方医学に対するモチベーションが落ちてしまうという実態も明らかになりました。ただ、その一方で、初期臨床研修で漢方医学を学ぶ機会があった研修医は、自分自身の考えで積極的に漢方薬を処方していることもわかりました」
今後は、初期臨床研修の2年間を大学7、8年生と位置づけて、卒後もモチベーションを維持してもらうために、研修における漢方医学教育を充実させる施策が重要だと新井医師は強調する。
高齢者が増え続けるなか、地域の医療現場では、西洋医学の補完療法としての漢方医学の大切さを実感している医師は多い。
漢方医学に対する、全国大学医学部の卒前教育、そして初期臨床研修施設での卒後教育のさらなる普及を望みたい。(文・伊波達也)
≪取材した人≫
東海大学医学部専門診療学系漢方医学教授 新井 信医師
1981 年東北大学薬学部卒。88 年新潟大学医学部卒。医学博士、医師、薬剤師。東洋医学科外来も担当し、東京薬科大学客員教授をはじめ数々の医学部の非常勤講師も務める。
※週刊朝日ムック『未病から治す本格漢方2020』より
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