新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、プロ野球の開幕が遅れている。4月17日、日本野球機構(NPB)は、臨時の12球団代表者会議を開催し、5月開幕の断念と交流戦中止、レギュラーシーズンの試合数削減を決めた。
現時点で開幕の目途はまったく立っていないが、この状況に不安を感じているのは何も選手だけではない。裏方としてプロ野球を支える審判も同じだ。
パ・リーグ審判員として29年、NPB審判技術指導員を8年務めた山崎夏生氏に、これまであまり報道されてない審判の現状と今後のプロ野球界について話を聞いた。
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――プロ野球の開幕が遅れています。この現状をどのように捉えていますか?
考えたくはありませんが、今年は開幕できないという最悪のケースも十分にありえると思っています。東日本大震災や阪神淡路大震災の時とは比べ物にならないほど、今の状況は重いです。
あの時は、地震さえおさまってくれれば、あとは「復旧に向けて進む」という“先”が見えていました。しかし、新型コロナウイルスに関しては、まだピークすら見えていません。
東日本大震災の時も、プロ野球の開幕は1カ月半遅れましたが「開幕できない」という選択肢はありませんでした。間違いなく開幕できると誰もが思っていました。しかし、今回は違います。プロ野球の歴史が始まって以来の最大のピンチではないでしょうか。
――開幕の遅れにより、選手と同じく審判にも多大な影響があると思います。
NPBには54人の審判が所属していますが、現在は全員が「自宅待機」を余儀なくされています。体力が落ちてしまわないように自宅周辺でランニングや筋トレをしたり、若手審判であれば自宅でルールの勉強をするなど、空いた時間を利用して、なんとかトレーニングを続けているといった状況です。
審判も選手と同じく“感覚”の世界なので、実戦からこれだけ遠ざかっていると試合勘は当然鈍ります。どれだけ経験を積んだベテランでも2~3カ月現場から離れるだけで、150キロを超えるプロのボールは、「怖い」と感じてしまいます。こんな状態では、到底トップクラスの技術を見せることはできません。