お血を引き起こす代表的な条件は五つあります。

 冷え、ストレス、過労、運動不足、そして加齢です。このうちひとつでも大きな問題があれば、連鎖反応的にほかの条件も悪化していきます。

例えば運動不足のせいで、冷えが強くなり、そのせいで眠りが浅くなって疲労が蓄積する……という具合に。

現代の日本人は、ストレスの多いあわただしい日常を送っていますから、お血になる条件がそろっているともいえるでしょう。

 お血の代表的なサインは、肩こりや目の下のクマなど。一見、病気ではなさそうなサインも、放置しておくと大きな疾患に結びつくこともあります。

■血がめぐることで体内が浄化されていく

 お血による影響で特に注目したいのは、「浄化する力」の低下です。私たちのからだのなかには、日々老廃物が生まれます。これを血のめぐりや水分代謝などを通じてどんどん排出できると、からだは健全な状態を維持することができるのですが、お血になるとからだから出ていきにくくなります。つまり浄化されにくくなるのです。

 浄化力の悪さを象徴するのが、便秘やむくみです。食べているのに便が出ない、飲んでいるのに尿が出ない、これは代謝の悪さの象徴です。

「毎朝お通じがあるから便秘じゃない」という人でも、実は食べたものの排出に2~3日かかっているということもあります。通常は24時間程度で排便されますから、スイカの種など消化しないものを食べてみて、何時間後に排便されるか確認してみるのもいいでしょう。

 老廃物が毎日きちんと排出されていないと、たくさんの荷物を抱えて走っているようなものです。めぐりのいい人に比べて格段に疲れやすく、病気も重症化しやすくなります。血のめぐりをよくするのも悪くするのも、基本は日々の生活です。小さなことから「養生」を始めましょう。(文・神 素子)

≪取材協力≫
邱紅梅(きゅうこうばい)医師
桑楡堂(そうゆどう)薬局顧問
北京中医薬大学医学部中医学科卒。中医師。大学病院で漢方の婦人科専門医師として勤務後、来日。東京学芸大学大学院で生理・心理学修士号を修得。2019 年より北京中医薬大学特任外国(海外)専門家に就任。現在は桑楡堂で漢方相談を行う。

※週刊朝日ムック『未病から治す本格漢方2020』より

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