中国の伝統医学である「中医学」の世界では、人間のからだは「気(き)・血(けつ)・水(すい)」の3要素で構成されると考えられています。なかでも「血」は、からだのなかの「めぐり」を整えるための重要なもの。女性は男性よりも冷えやすいだけでなく、仕事に家事に子育て、介護と、多くのストレスを抱えがちだからこそ「血のめぐり」を味方につけたいものです。
週刊朝日ムック『未病から治す本格漢方2020』で、邱紅梅(きゅうこうばい)医師に取材した内容をお届けします。
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中医学における「血」は、「気・血・水」のひとつです。血管を通る血液だけでなく、骨髄にある「血液のもと」や、全身に送られる栄養(滋養)、さらに代謝による老廃物の運搬や排出なども、中医学では「血」としてとらえます。ですから「血のめぐり」という場合、血液だけでなく血中の栄養素やリンパ液の回流なども含まれると考えてください。
このような「めぐり」が滞っている状態を、中医学では「お血(けつ)」といいます。お血の「お」(注:於にやまいだれ)は、どんよりしている、汚れているという意味です。
古来中国では、目の下のクマや手足の冷えがある女性は「お血(けつ)がある」とされて、宮中に入ることはできなかったそうです。お血の女性は皇帝の子どもを生むのにふさわしくないと考えられていたからでしょう。
そんな歴史があるためか、中国の女の子たちは初潮を迎える前から、「からだを冷やしちゃダメ。お嫁に行けませんよ」と母親に言われて育つ人が多いのです。生理の期間は下半身を温め、赤い食べ物を積極的にとり、体温より冷たいものは食べません。お血にならないよう、養生することが習慣になっています。
一方、日本の女性たちは冷えに対して少し無頓着。夏は冷房が利いたなかでも薄着だし、おしゃれを意識してか冬も素足。飲み物だって一年中氷入りです。しかも日本の女性はかなりストレスフル。男性と同じようにバリバリ働いても、結婚すれば家事も育児も介護も一人で担っている人も少なくありません。睡眠時間も、ほかの先進国と比べても断トツに短いことがわかっています。これではお血を呼び寄せているようなものです。