しかしながら、NYUランゴーンメディカルセンターの病理部門のJoan Cangiarella博士は、抗体を検出することで過去の感染歴を評価することができる一方で、COVID-19の抗体検査について非常に曖昧であることを指摘しています。「COVID-19の抗体を持っていることが何を意味するのか、科学的にはまだわかっていない。データが完全に公開されているとは限らないので、抗体を持つことが、実際に免疫があることを意味するかどうかはわからない」と言います。

 4月末には、英国でも、政府主導の大規模なCOVID-19感染とCOVID-19抗体検査の研究が開始されたと発表されました。最大30万人を募り、COVID-19が英国内にどれだけ広まっているかを調べ、さらに約1000世帯の大人に対しては血液を採取し、COVID-19に対する抗体を備えている人がどの程度いるかも調べるようです。ひとまずの結果は、5月の早期には判明する見込み。結果が気になるところです。

 さて、英国のジョンソン首相が「ハッピーバースデーを2回歌いながら石鹸とお湯で手を洗ってください。科学的に立証された簡単なアドバイス。これは私たちにできる最も重要なことなのだ」と訴えた手洗いの徹底。それ以外に、トイレの蓋を閉めて流すこともCOVID-19感染予防に大切であることがわかってきました。

 オランダのエラスムス医療センターのLamers氏らは、COVID-19がヒトの腸細胞にいとも容易に感染して増える可能性があることを指摘し、武漢大学のLiu氏らは、流行時の武漢市の2つの病院を調べたところ、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の浮遊RNA濃度は隔離病棟や風通しが良い患者の部屋では非常に低く、患者用のトイレでは上昇していたことが判明したと言うのです。

 ヒトからヒトへの感染だけでなく、ヒトからモノへの感染のウェイトも大きいことを示唆しています。感染対策の練り直しが必要だと言えるのではないでしょうか。

著者プロフィールを見る
山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

山本佳奈の記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
「更年期退職」が社会問題に。快適に過ごすためのフェムテックグッズ