2021年のF1は大きな変革を迎える予定だった。
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2019年末に、FIAは2021年に新世代型F1マシンの導入すべき、技術レギュレーションの変更に合意したと発表した。これにより、現在の勢力図も変わることが予想され、ドライバー市場も活発化するだろうと予想されていた。
そのことは2020年シーズンがスタートする前の時点で、2021年以降もチームとの契約を保持しているドライバーがマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、シャルル・ルクレール(フェラーリ)、エステバン・オコン(ルノー)、セルジオ・ペレス(レーシングポイント)、ジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)しかいないことが物語っている。
それ以外の15人のドライバーたちは、新世代型F1マシンの導入を機に、移籍を虎視淡々と狙っていた。
現在、6連覇中のチャンピオンチームにいるルイス・ハミルトン(メルセデス)は無理に動く必要はないが、6年間タイトルから遠ざかっているセバスチャン・ベッテルにとっては2015年から在籍しているフェラーリを離れる最良のタイミングで、実際に契約を延長しないことが決まった。そして、その空いたシートを巡り、ダニエル・リカルド(ルノー)、カルロス・サインツ(マクラーレン)らが争奪戦を繰り広げ、さらにそのほかのドライバーたちの玉突き衝突のような移籍合戦が見られるだろうと考えられていた。
ところが、新型コロナウイルス感染症の世界的流行によって、F1は開幕戦から第9戦カナダGPまでの延期が決定。さらに世界経済も大きく停滞したため、開発費がかかる新レギュレーションの導入を遅らせることを3月下旬に緊急決定した。
これによって、移籍を考えていたドライバーの思惑は変更を余儀なくされた。なぜなら、新レギュレーションが1年延期されるのなら、2021年に慌てて移籍する必要がなくなったためだ。さらにチーム側も2020年シーズンだけでなく、2021年シーズンの見通しも不透明な中、大枚を叩いてドライバーを新たに受け入れる余裕はなくなった。つまり、ドライバー市場はドライバーたちの売り手市場から、チーム側の買い手市場に主導権が変わってしまった。