巨体レスラーの先駆者でありリング内外で記憶に残っているのが、アブドーラ・ザ・ブッチャー。186cm150kgの巨体を誇る『黒い呪術師』は、「地獄突き」(喉元への指先を突き刺す打撃技)や「毒針」(エルボードロップ)などを駆使し日本マット界の常連外国人となった。初来日は70年の日本プロレス時代と古く、その後は全日本、新日本などでも活躍した。

 ザ・シークとのタッグは『地上最凶悪コンビ』とも呼ばれ、各地で流血戦を展開。無気味な入場曲『吹けよ風、呼べよ嵐』も代名詞だ。ジャイアント・キマラ(全日本ほか)や、ザ・ヘッドハンターズ(W★INGほか)など、“ブッチャー系巨体レスラー”はいるが、本家の存在感は及ばない。橋本真也がその体型などから、「ブッチャー」と呼ばれたこともあった。

 メキシカン・プロレスは『ルチャリブレ』と言う。空中技や「ジャべ」と呼ばれる関節技が有名だ。小柄な選手が多い印象だが、厚い胸板と尋常ではない肩幅など、鍛え上げられた肉体の多さに驚かされる。最も有名なのは『仮面貴族』ミル・マスカラス。公称80歳近い大ベテランだがいまだにマットに上り続け、世界的人気を誇る。

 180cm105kgの身体はボディビルで鍛え上げられたものであり、メキシコ代表候補にもなったレスリング技術も持つ。「フライング・クロス・チョップ」や「ダイビング・ボディ・アタック」などが得意技。実弟ドス・カラスとの「編隊飛行」は日本マットでも欠かせないものとなった。また同様にメキシカン系では、新日本で藤波辰巳との抗争を繰り広げた『盗賊仮面』エル・カネック(183cm105kg)の肉体美も忘れられない。

 強烈な肉体に加え、輝かしい経歴を併せ持っていたのが、スコット・ノートンとビッグバン・ベイダー。ノートン(190cm150kg)はアームレスリング世界大会優勝、全米選手権3度優勝という輝かしい経歴を持つ。87年にはシルベスター・スタローン『オーバー・ザ・トップ』にも出演。歌手プリンスのボディガードを務めるなど、大きな話題を引っ提げプロレスデビューを果たした。90年の初来日から存在感を示しIWGPヘビー級2度、同タッグ王座を2度獲得するなど、90年代の新日本を代表するレスラーとして君臨した。

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