早稲田、立教、追手門学院――。大学ラグビーの世界に、ちょっとした旋風が吹いています。「識学」という組織論を取り入れたチームが、いい成績を出してきているのです。「識学」は、日本的なあいまいさ、なれ合いを排除しルール順守を徹底、目標に向かって力を積み上げる経過変化などを実践する組織マネジメント理論です。なぜラグビーと組み合わせることで成果を上げられたのでしょうか。
株式会社「識学」。
安藤広大さん、40歳。
この会社をつくった社長です。早稲田のラグビー部出身です。自分から自分に限界をつくり、ほぼ控え生活に甘んじてしまいました。卒業後に勤めた会社で、部下が育たなくて悩んでいたとき、識学という組織論をつくった福冨謙二さんに出会います。上司が原因だと気づき、このことを広めたいと15年、起業しました。
識学とラグビー。その組み合わせの始まりは、立教ラグビー部のヘッドコーチ、西田創(つくる)さんを識学に誘った後藤さんにあります。
後藤翔太さん、37歳。
早稲田の4年のとき、大学日本一になりました。日本代表、神戸製鋼コベルコスティーラーズの主将になったこともあります。
13年、追手門学院大学に請われて女子ラグビー部の指導者になりました。ラグビーのことは任せておけ、すぐに結果が出せるさ。後藤さんはそう思っていました。けれど2年間、思うような結果が出ません。ラグビー部の先輩である安藤さんに相談し、識学を学びました。
安藤さんが指摘したのは、
「コーチを殺している」
でした。優秀な女性コーチを通り越して選手に指示をしていたのです。監督という社長がすべてを見てはダメ、コーチという管理職に責任を持たせなくては組織が機能しなくなる、というのです。
密集からボールを出すスクラムハーフと、パスを受けるスタンドオフとの意思疎通ができずにミスが起こる。そのことにも、後藤さんは悩んでいました。
安藤さんの助言は、こうでした。