新日本プロレスのスターとしてキャリアの頂点で退団し、世界最大のプロレス団体、米・WWEに移籍した中邑真輔さんがAERAに登場。AERA 2020年5月25日号から。
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リングでは赤いコスチュームがトレードマークだが、ヨウジヤマモトの黒い服がよく似合う。
「他のブランドではサイズがないことが多く、ヨウジヤマモトの店員には似た体形の方もいたのでよく買っていました」
新日本プロレスのスターだった中邑真輔(40)が、いまや米・WWEで世界中のファンを魅了している。
スーパールーキーとして破格の扱いで日本武道館でデビューし、最年少で新日本プロレスで最も権威があるIWGPヘビー級王者になった。当時は総合格闘技ブームの真っ最中。新日本プロレスも暗中模索の時期で、大学時代に総合格闘技のジムにも通っていた中邑は新日本代表として総合格闘技のリングに送り込まれる。プロレス界を背負って戦い、勝利。一躍プロレスファンの救世主となり、アントニオ猪木の寵愛(ちょうあい)も受けた。
常に最前線でスポットライトの当たる場所にいて、背負うものも多かった。
しかし、2010年頃から試合中に身体をくねくねさせ始める。脱力することで力を入れた際のインパクトやスピードの緩急を出し、技を先鋭化させるためだった。「心も解放してやる、感覚を開きまくる」という感覚で試合をしていることを、著書の中で語っている。
そんなプロレスが、海を越えファンを魅了し始める。海外ファンからは「swag(ヤバイ)」と言われ、アメリカ興行では大きなコールがわき起こった。
日本でできることはやり切った。中邑は新日本プロレスでのラストマッチで、こう言った。
「物語はずっと続いていくから、さよならは言いません」
いまはアメリカを拠点に、世界に向けてプロレスという物語を紡いでいる。(朝日新聞出版・小柳暁子)
※AERA 2020年5月25日号