政治資金に詳しい神戸学院大学の上脇博之教授はこう話す。
「政治家が自分の所有物を事務所にしていれば、結果的に自分の収入になっている。政治資金が還流しているじゃないですか。それではいけないというので、政治家によっては無償で事務所を提供している人もいます」
衛藤氏が代表を務める別の政治団体「自民党東京都参議院比例区第78支部」の16年と17年の収報にも、気になる記述があった。
支出の「その他の経費」の項目の中に、秘書への「退職金」として毎月15万円が15カ月間、総額225万円が支払われていた。退職金なら「人件費」に入るものかと思うが、なぜ「政治活動費」の経費とし分割していたのか。
退職した元秘書本人に質問すると、
「いくらか退職金をもらったのは確かです。分割になったのは事務所にもいろいろ事情があるのでしょう」
前出の事務所の秘書に聞くと、こう答えた。
「退職金は一括で払えず、15カ月に分割して払わざるを得なかった。人件費で毎月、退職金が出るはずがないから、退職年度において、そのむねをいったん総額計上し、毎月々、政治活動費として落としたということです」
そう言われてもう一度、収報を見ると、該当の16年には前年からの繰越金が2563万円、17年には前年からの繰越金が1822万円あった。これだけの繰越金があったにもかかわらず、なぜ一括で払わず、分割にしたのだろうか。再度、質問すると、
「それはそれ、これはこれです。残高からすれば退職金はわずかな金額なのかもしれないけれども、動かせるお金と動かせないお金がある。ここは動かさないほうがいいというニュアンスなんです」(事務所の秘書)
なんともはっきりしない回答である。円満退職だったのだろうか。
「政治家の事務所は変なうわさを立てられると選挙ができなくなるので、みなさん円満退職です。もし、万が一なんやかんやと不満を持たれているのであれば、その不満を解消した後に辞めてもらっています。うちは不満を抱えたまま、辞めるという人はいません」(同)
前出の上脇教授はこう言う。
「政治資金の人件費って、ブラックボックスなんですよ。人件費の項目は総額だけ書けばいい仕組みになっていて内訳がわからないんです。事務所には常勤が何人で非常勤が何人というのもわからない場合が多い。収支報告書に書いた以上、説明する責任があります。『それはそれ、これはこれ』というのでは説明責任になっていません」
いずれにしても、政治家は「発言」と「カネ」には気をつけていただきたい。(本誌・上田耕司)
※週刊朝日 2020年5月29日号