長嶋茂雄(巨人)の天覧試合サヨナラ弾(1959年)、江夏豊(阪神)の延長11回ノーヒットノーラン達成弾(73年)、伊東勤(西武)の逆転サヨナラ満塁弾(94年)など、記憶に残るサヨナラ本塁打は、数えきれないほどある。その中でも、優勝決定弾としてファンに強烈な印象を与えたのが、2000年、巨人に4年ぶりVをもたらした二岡智宏のサヨナラ本塁打だ。
【ファンが選んだ平成で最もカッコいいバッティングフォームはこの選手!】
9月24日の中日戦(東京ドーム)、マジック1の巨人は、中日の先発・前田幸長に8回まで散発5安打に抑えられ、0対4の劣勢。V決定は翌日以降に持ち越されるかに思われた。
だが、土壇場の最終回に自慢の“ミレニアム打線”が火を噴く。“クセ者”元木大介が右前安打を放ち、反撃の狼煙を上げると、高橋由伸も右前に運ぶ。逃げ切りを図る中日は、ここで守護神・ギャラードを投入するが、松井秀喜も右前安打で続き、あっという間に無死満塁。マルティネスは空振り三振に倒れたものの、次打者・江藤智は、外角への変化球を2球続けて見送ったあとの3球目、147キロ直球を「待ってました!」とばかりに左中間席に起死回生の同点満塁弾。広島からFA移籍してきた“V請負人”の値千金のシーズン33号が、一気に流れを変えた。
奇跡の同点劇の興奮がまだ覚めやらぬなか、入団2年目の若手・二岡が打席へ。この日まで3本のサヨナラ弾を放っている“勝利を呼ぶ男”は「正直、狙ってました」と、1ストライクからの2球目、外角高めスライダーを得意の右打ちで仕留める。打った直後、二岡は絶叫しながら万歳ポーズ。巨人の4年ぶりVを乗せた白球が右翼席に吸い込まれていった。
完封負け寸前からの大逆転勝利。東京ドームでは初体験の胴上げで、5度宙を舞った長嶋監督も「もう言葉では言い表せないですね。本当に監督冥利に尽きる一戦でした。やっぱり野球というのは生きていますから」と感激しきりだった。
そして、「野球は生きている」を体現するような奇跡の幕切れは、2年続けて起きた。