森氏の不在時期にあたる13年入団のエクトル・ルナは、06年からスカウトに就任した前出のマルティネス氏が獲得。3年間で打率3割以上を2度マークするなど、3番打者として活躍した。13年オフ、ヘッドコーチとして中日に復帰した森氏は、二遊間の守備に定評のあるアンダーソン・エルナンデスを獲得しているが、これは若手の高橋周平に守備を学ばせ、一本立ちさせるという狙いもあった。

 18年シーズン途中に入団したジョエリー・ロドリゲス(現レンジャーズ)も、監督時代の森氏が中南米リーグなどを視察した際にリストアップした一人だ。同年はNPB左腕最速の159キロをマークし、翌19年も64試合登板、3勝4敗1セーブ41ホールド、防御率1.64の好成績で最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得した。皮肉にも、日本での素質開花が国内他球団を含む日米の争奪戦に発展し、退団に至ったのが惜しまれる。

 監督退任後、SDに就任した森氏は、昨季限りで中日を退団。“森ルート”は、桂川昇国際渉外担当兼通訳とルイスに引き継がれた。今季はロドリゲスの後釜として最速153キロ左腕のルイス・ゴンサレスと外野手のモイセ・シエラを獲得。森氏の“遺産”がどれだけ活かされているかという意味でも、彼らの1年目が注目される。※文中の金額は当時のレートで換算

(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2019」(野球文明叢書)。

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