大一番、「持ってる」男はさすがに違う。

 日本ハムの斉藤佑樹投手(23)が大抜擢を受けた開幕マウンドで好投。打線の援護もあり、ひょうひょうとプロ初の完投勝利で飾った。開幕戦で完投したのは斎藤だけ。6年前、夏の甲子園決勝で投げ合った田中将大楽天)もロッテ戦の6回で降板し、負け投手になった。

 試合後のヒーローインタビューで斎藤は、

「今は『持ってる』ではなくて、背負っています」

 と言った。開幕投手の重圧から解き放たれて印象的な言葉を口にすると、さわやかな「ドヤ顔」になった。

 物議を醸した起用だった。5年連続で開幕投手を務めたダルビッシュ有が海を渡り、栗山秀樹新監督(50)は昨季6勝6敗だった斎藤に大役を託した。

 栗山監督は「将来のため」などと起用の理由を説明していたが、抜擢は興行を重視した球団の主導だったようだ。番記者が語る。

「2月には開幕戦用のポスターができあがっていました。投手陣では斎藤だけが写っていました」

 栗山監督はキャンプ中から報道陣に斎藤の起用をほのめかし、オープン戦で好投してくれるのを待って正式に通達するつもりだった。

 しかし、ピリッとしない。

「コーチ陣からも『早く伝えないとチームの士気にかかわる』との声が上がる中、ようやく3月18日に斎藤に手紙を渡して正式に伝えたのです」(同記者)

 周囲の選手たちは、どう受け止めたのか。チーム関係者が、開幕戦に至る舞台裏を明かす。

「本人に告げる前、栗山監督は稲葉篤紀、金子誠らの主力野手を集め、『開幕を斎藤に任せるから、頼む』と伝えました。それから昨季11勝の武田勝に『開幕を奪ってゴメン』と謝った。武田は次のエースの自覚があったから悔しかったでしょうが、大人の対応でした」

 斎藤自身は番記者に、「僕は去年6勝6敗の投手なのに。正直、不安ですよ」と漏らしていた。

※週刊朝日 2012年4月13日号