ただ、高齢者らに対する「命の選別」になりかねないという意見もある。
「患者が急激に増えたイタリアでは、人工呼吸器が不足し、高齢者から若者につけ替えられました。日本でも医療資源が不足したら、集中治療室の医師はどうするか判断を迫られることになります。現状、医師は医療をしなければならないので、人工呼吸器を外せません。(外したら)遺族から訴えられたり、殺人容疑で告訴されたりする可能性があります」
脳死後や心臓が停止した死後の臓器提供については、臓器提供意思表示カード、健康保険証、運転免許証などの裏面にある記入欄で可否を示すことができ、本人の意思が尊重される。
一方、「譲カード」は、臓器提供意思表示カードのような効力はない。
「あくまでも任意であり、効力はありませんが、少なくとも遺族が訴えることはないと思います。入院して人工呼吸器をつけてからでは、意思表示できません」
「第2波」で再び医療現場が逼迫(ひっぱく)する事態になったら、どうするのか。慎重な議論が求められる。(本誌・岩下明日香)
※週刊朝日 2020年6月12日号

