人工呼吸器や人工肺を若い人に譲る意思を示す「譲カード」
人工呼吸器や人工肺を若い人に譲る意思を示す「譲カード」
この記事の写真をすべて見る

 新型コロナウイルスの「第2波」が懸念される中、人工呼吸器や人工肺が不足したら、自分がつけている器具を若い人に譲る意思を示す「集中治療を譲る意志カード」が話題になっている。通称「譲(ゆずる)カード」だ。

 発案したのは、大阪大学人間科学研究科未来共創センター招聘(しょうへい)教授の石蔵文信氏(64)。循環器専門の現役医師であり、救急医として集中治療室で治療にあたった経験を持つ。

 石蔵氏は意図をこう語る。

「新型コロナにより、人工呼吸器が足りなくなったらどうするか。医師だけでなく、患者さんやその家族にも考えてほしいという思いを込めて作りました」

 新型コロナによる医療崩壊の危機が叫ばれた4月上旬にカードを作成。石蔵氏が会長を務める「日本原始力発電所協会」のホームページから自由にダウンロードできるようにした。

 石蔵氏によると、今年2月、自身にがんが見つかった。全身に転移していたという。余生を意識する患者の立場にも立たされた。

「もし健康だったら、カードを作ろうとは思わなかったでしょう。医師と患者の両方の立場に立った時、もし人工呼吸器が足りなくて医師が悩んだら、僕のほうを取っていただいてもいいですよ、という意思表示をしておきたかったのです」

次のページ