昨年10月にくも膜下出血で倒れ、現在リハビリ中の3人組ユニットglobeのボーカル・KEIKO(以下、「桂子」)。夫である音楽プロデューサーの小室哲哉氏が、作家・林真理子氏との対談のなかで、現在の桂子夫人の様子を明かした。

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小室 いいか悪いかといったら、相当いいほうだと思いますね。でも、薬の副作用で急に吐いたりとか、眠ったりとか。

林 もう普通にお話はできるんですか。

小室 ふつうにできます。突然、突拍子もないところに飛んでいったりしますけどね。脳は怖いですね。何がどうなっているのか、いまだにわからないですから。でも、病気になる前より、今のほうが幸せなのかもしれないなと思いますね。

林 それはどういうことですか。

小室 23、24歳でデビューしてから、芸能界の中で駆けっこじゃないですけど、ああだこうだ言われることも多かったし。でも、今はそういうことが何もなく……。

林 穏やかな日々。

小室 まさにそうですね。現代社会で暮らす人たちって、いろんなことを同時進行的にやるじゃないですか。それが今の桂子は、テレビを見ながらおしゃべりしていても、どっちかに集中しちゃうんですよ。なので、幸せなのかもしれないと思ってしまうんですね。そんな彼女を見ていると、急に大きな娘ができたような、父子家庭みたいな感じですね。(笑)

林 まあ、そうですか。

小室 夕方になって、だんだん暗くなると、いちばん大事な人がそばにいてくれないと寂しがったり。それも含めて、感情的には少女ぐらいかなという……。知的なレベルはもっと全然高いんですけど」

林 かたわらでピアノを弾いてあげたりなさるんですか。

小室 いや、不思議なことに、今のところ音楽にあまり興味がなくて、曲とか聴きたがらないですね。時間が経過することに頭を使うのを面倒くさがるんです。音楽って、イントロがあって、それを覚えていて、ずっと流れていってサビがきて、それでおもしろかったりするわけですね。そういう時系列で動くことに関して興味がないみたいで、瞬間、瞬間のことをおもしろがるという。だから吉本新喜劇的な、その場その場でみんなずっこけたりすることのほうが楽しいみたいです。

林 そうですか。でも、快復されたら、音楽を欲するようになるでしょうね。

小室 そうですねえ。記憶障害には、昔のことをすっかり忘れちゃって、僕のことが誰だかわからない場合と、昔のことは全部覚えているんだけど、新しいことを記憶できにくい場合があって、桂子の場合は後者なんです。だから新曲を覚えてもらうことはまだまだ難しいかもしれないですね。

※週刊朝日 2012年4月6日号