「もともと子どもは怖い話が大好きです。冒険ストーリーとは対極にありますが、非日常のドキドキ感を味わわせてくれます」(堀内さん)

 マネー絵本も時代を象徴する絵本の代表だろう。

 15年に出されたのは、古くは物々交換の時代から現代まで歴史を辿りながらお金の本質に迫る『なるほど!お金のはなし』(BL出版)。

 19年には、新ジャンルである幼児向けのマネー絵本、『おかねをかせぐ!』『おかねをつかう!』(岩崎書店)が発売された。むかしは、「子どもにお金の話はするな」と言われたものだが、孫と一緒にお金の仕組みをやさしく学ぶのも令和流のようだ。

 同性愛やトランスジェンダーなど性の在り方が多様化する世相を反映した「LGBT(エルジービーティー)」絵本も急速に増えている。性的マイノリティーという言葉すら、日本でなじみのなかった08年。ポット出版は、『タンタンタンゴはパパふたり』の日本語訳絵本を出した。NYのセントラル・パーク動物園で雄のペンギンのカップルが巣の卵を協力して温め、育児をしたという本当の話だ。

 だが、米国図書館協会(ALA)による「最も批判を受けた図書」の第1位に3年連続選ばれた作品でもあった。

 ポット出版社長の沢辺均さんは、日本でも苦戦したと振り返る。転機は15年ごろ。社会のLGBTの問題への関心の高まりとともに、新聞や全国自治体の男女共同参画や人権教育関連の部署から問い合わせがくるようになった。

「全国に先駆けて渋谷区と世田谷区で同性パートナーシップ証明制度が始まるなど、社会の理解が進んだ時期でした。この絵本は、ペンギンが主人公なので学校でも教材として取り上げやすいのでしょう。全国の小中学校からも注文が入っています」

 さらに東京五輪で外国人選手や観光客が増えることから、全国にレインボートイレも増えた。LGBTは、自然な価値観として社会に溶け込みつつある。

 同じポット出版から発売された脱・プリンセスストーリー。「王子さま」と「王子さま」が出会って結ばれる『王さまと王さま』という絵本もおもしろい。じいじ、ばあば世代はどう受け止めたらいいのか。

「70代前半の団塊世代は、大学でリベラルな思想に直面するなど、むしろ柔軟性に富んだ人たちも多かったのではないか。性的マイノリティーについても、孫と一緒に考えられる世代でもあると思います」(沢辺社長)

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