「15年9月、久実氏の妻である三枝子氏が、久実氏の遺骨や位牌を持って大戸屋社内にある窪田健一社長の部屋を訪問して、その場で智仁氏を社長にするよう迫りました。窪田社長は久実氏の従兄弟。お家騒動がメディアで取り上げられてしまい、イメージダウンになってしまった」(前出の大戸屋関係者)

 しかし、当時の智仁氏は大戸屋に入社してから2年程度。創業者の長男とはいえ、上場会社の社長に就任するのは容易ではない。

 結果として、お家騒動の第一幕は創業家に大きな不満を残すことになる。久実氏が亡くなる直前に26歳で常務取締役に就任していた智仁氏は、16年2月に大戸屋を去った。その後、遺族に支払われた功労金の額は2億円だった。智仁氏は現在、高齢者向け外食宅配事業の会社を経営している。

 ただ、お家騒動第一幕については、社内には創業家に同情する声もある。智仁氏を知る社員は言う。

「智仁さんはとてもマジメな人。お家騒動があった後も、個人的には智仁さんに悪い感情はありません」

 それが、昨年10月に一変した。智仁氏と三枝子氏がコロワイドに株式を売却したからだ。この大戸屋社員は言う。

「ほとぼりが冷めれば、智仁さんは大戸屋に戻ると思っていました。実際に、彼が店で働いていたときに使っていた名札を、ずっと保管していた社員もいます。彼が会社に戻ったときに、渡すつもりだったそうです。それも、コロワイドに株式を売却したことで、名札は捨てたそうです」

 大戸屋に乗り込んできたコロワイドは、居酒屋やレストランをチェーン展開し、焼き肉店「牛角」や回転ずし店「かっぱ寿司」などを次々に買収。積極的なM&A(企業合併・買収)戦略で、外食企業売上高で業界第4位に急成長した。

 剛腕で知られる会長の蔵人金男氏の発言は、物議をかもしたこともある。過去にはコロワイドの社内報で、買収した企業の社員に対して<個人的に張り倒した輩が何人もいる><生殺与奪の権は、私が握っている>などと言い放った。これがインターネット上で批判され、炎上騒ぎを起こした。

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