カリスマ会長の死後、創業家と経営陣が対立し、5年にわたって“お家騒動”が続く定食チェーン「大戸屋」。バトルはついに6月25日に開催される株主総会でのプロキシーファイト(委任状争奪戦)に発展した。果たして勝つのはどちらか?
【写真】結末はいかに…創業者の三森久実前会長と大戸屋の窪田健一社長
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「こういった形で世の中を騒がせてしまい、大変申し訳なく思っています」
大戸屋の名を世に知らしめた実質創業者の三森久実前会長の長男・智仁氏(31)は、本誌の取材に謝罪の言葉を繰り返した。
智仁氏は昨年10月、父から相続し、母親の三枝子氏とともに保有していた大戸屋ホールディングス(HD)の株式のほぼすべてを、外食大手のコロワイドに売却。全株式の約2割を占める筆頭株主となったコロワイドは、6月25日に開催される株主総会を前に、大戸屋の経営陣刷新を求める提案をしている。人事案では、2016年に大戸屋の取締役を退任した智仁氏も非常勤の取締役候補として名前を連ねている。
この人事案に大戸屋は強く反発。現在、大戸屋とコロワイドで激しいプロキシーファイトが繰り広げられている。
なぜ、大戸屋と創業家の対立は修復不可能になったのか。まずは、5年前のお家騒動を振り返ってみよう。
大戸屋は1979年、久実氏が養父から引き継いだ東京・池袋の小さな定食店から始まった。一代で国内外463店舗(20年3月現在)を展開する飲食店チェーンを築き、日本の定食ブームの火付け役となった。
異変が起きたのは、久実氏が肺がんで死去した15年7月。若すぎる創業者の死が、お家騒動を引き起こした。大戸屋関係者は言う。
「久実前会長は、闘病中に相続税対策として、会社から遺族に8億円を支払う仕組みを考えていました。これが、創業家と現経営陣が対立する火種になってしまったのです」
久実氏の死後、大戸屋には10億円以上の保険金が入った。久実氏は、その中から8億円程度を「功労金」として会社から遺族に支払う仕組みを考えていたという。だが、功労金は会社の規定にない。株主の理解も得なければならない。税金の問題も絡んで、支給額の決定が迷走する。これをきっかけに双方の不信感が高まった。その過程で、前代未聞の事件も起きた。