落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「リモート」。
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ここんところのリモートあれこれ。
先日「笑点」をリモートでやっていた。司会の昇太師匠はスタジオ、回答者は自宅から。六つのモニターが遺影に見えた。枠のなかの師匠方が動いているとホッとする。座布団運びの山田くんが出ていない。そらそうだ。リモートで座布団は運べないからね。山田くんの今後が心配。ご存じの方も多いだろうが、テレビのリモコンのdボタンを押すと視聴者がメンバーに座布団をあげたりとったりできる。山田くんの代わりに三平兄さんにバンバン座布団あげてみた。どんな答えであろうとも。激励をこめて。それなのに番組終了時、三平兄さんは0枚。他の師匠は◯万枚とかなのに。だがこれもいつものお約束。笑点ファンはみんな、わかってる。三平兄さんは安定の自粛モードです。
NHK「ラジオ深夜便」に2度リモート出演した。1回目はアンカーの工藤三郎アナとほぼ2時間フリートーク。ラジオなのでリスナーには見えないが、お互い顔が見えたほうが話しやすいということでスカイプで話すことになった。23時スタート。その日は晩酌を我慢していたのだが、もはや家族も寝てしまいダイニングには私と画面に映る工藤さんのみ……。死角に置けばわかるまい。ビールを開ける。NHKラジオに酒を飲みながら出演できるのもリモートならでは。曲の合間にもう一本。おかげでずいぶんゴキゲンな放送になった。翌日、落語界の重鎮・鈴々舎馬風師匠から自宅に電話があった。「昨日の『深夜便』良かったぞ!」。まじか。2回目は「ママ☆深夜便」という「子育て中のママ向け」の企画だったので、ホットミルクティーを飲みながら。これがTPOというものだ。明くる日、馬風師匠からの電話はなかったけど、まぁいいだろう。