【内耳のイメージ図】“有毛細胞の毛”が加齢に伴ってハゲて薄くなると、耳の聞き取り能力が落ちる(図はあくまでイメージで、実際の内耳の構造はもっと複雑です)
【内耳のイメージ図】“有毛細胞の毛”が加齢に伴ってハゲて薄くなると、耳の聞き取り能力が落ちる(図はあくまでイメージで、実際の内耳の構造はもっと複雑です)

聞き取りやすい話し方の基本は、「子音をハッキリと、大声ではなく、ゆっくりと話す」こと
聞き取りやすい話し方の基本は、「子音をハッキリと、大声ではなく、ゆっくりと話す」こと

坂本真一/工学博士・技術経営修士。1989年、工学院大学電気工学科卒業。1991年、工学院大学大学院修士課程修了(電気工学専攻)、リオン株式会社勤務。2004年4月~2007年3月、日本音響学会聴覚研究委員会委員。2006年、リオン株式会社退職、株式会社オトデザイナーズ代表取締役。2013年8月~2017年6月、日本音響学会・論文編集委員会委員。2015~18年、九州大学客員教授。2015年~、京都光華女子大学客員教授
坂本真一/工学博士・技術経営修士。1989年、工学院大学電気工学科卒業。1991年、工学院大学大学院修士課程修了(電気工学専攻)、リオン株式会社勤務。2004年4月~2007年3月、日本音響学会聴覚研究委員会委員。2006年、リオン株式会社退職、株式会社オトデザイナーズ代表取締役。2013年8月~2017年6月、日本音響学会・論文編集委員会委員。2015~18年、九州大学客員教授。2015年~、京都光華女子大学客員教授

「声は聞こえているのに、何を言っているのかよくわからない」
「自分の言いたいことが、相手に伝わらない」

【「ゆっくり、ハッキリ、大声を出さずに話す」とは?】

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、各所での導入が加速しているテレワーク。その中で、こんな悩みを訴える人が増えています。

 しかしこの悩み、通信機器やマイク、スピーカーなどに問題がなければ、皆が話し方をちょっと変えるだけで、簡単に解消できるのです。具体的には、「ゆっくり、ハッキリ、大声を出さずに話す」、これだけ。教えてくれたのは、オトデザイナーズ代表で京都光華女子大客員教授の坂本真一さん。耳の専門家である坂本さんに、40代で増えている「無自覚難聴」について、話を伺いました。

■テレワークに必要な“聞き取る力”

 電話やリモート会議が主となるテレワークでは、コミュニケーションの多くの部分を声(言葉)に頼ることになります。そこで最も重要になるのが“耳”、すなわち“聞き取る力”です。

 様々な音色やトーン、言葉の違いなどは、主に、その音に含まれる周波数成分の強弱で決まります。

 人間の耳の穴の奥の、鼓膜のさらに奥には、渦巻き状の内耳と呼ばれる器官があります。この中には数万本の有毛細胞が並んでいて、その上にはビッシリと毛が生えています。有毛細胞は、耳に入ってきた音に含まれる周波数成分を、毛の動きを利用して分析し続け、その結果を順次脳に送っています。私たちは、そのおかげで、音の種類や一文字一文字の言葉の違いを聞き取ることができるのです

これは「聴覚の周波数分解能」と呼ばれる、人間の聴覚のとても優れた機能です。

■耳がハゲる!? おそらく、あなたもなっている、無自覚難聴とは?

“有毛細胞の毛”は、頭髪と同じように加齢に伴ってハゲて薄くなっていきます(ただし、頭髪ほど毛量に個人差が無いと言われていて、男女差もほとんどありません)。毛が薄くなってしまうと、有毛細胞が機能しなくなりますから、結果として、周波数分解能が落ちてしまいます。

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「加齢性難聴クイズ」に挑戦