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「声は聞こえているのに、何を言っているのかよくわからない」
「自分の言いたいことが、相手に伝わらない」
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、各所での導入が加速しているテレワーク。その中で、こんな悩みを訴える人が増えています。
しかしこの悩み、通信機器やマイク、スピーカーなどに問題がなければ、皆が話し方をちょっと変えるだけで、簡単に解消できるのです。具体的には、「ゆっくり、ハッキリ、大声を出さずに話す」、これだけ。教えてくれたのは、オトデザイナーズ代表で京都光華女子大客員教授の坂本真一さん。耳の専門家である坂本さんに、40代で増えている「無自覚難聴」について、話を伺いました。
■テレワークに必要な“聞き取る力”
電話やリモート会議が主となるテレワークでは、コミュニケーションの多くの部分を声(言葉)に頼ることになります。そこで最も重要になるのが“耳”、すなわち“聞き取る力”です。
様々な音色やトーン、言葉の違いなどは、主に、その音に含まれる周波数成分の強弱で決まります。
人間の耳の穴の奥の、鼓膜のさらに奥には、渦巻き状の内耳と呼ばれる器官があります。この中には数万本の有毛細胞が並んでいて、その上にはビッシリと毛が生えています。有毛細胞は、耳に入ってきた音に含まれる周波数成分を、毛の動きを利用して分析し続け、その結果を順次脳に送っています。私たちは、そのおかげで、音の種類や一文字一文字の言葉の違いを聞き取ることができるのです
これは「聴覚の周波数分解能」と呼ばれる、人間の聴覚のとても優れた機能です。
■耳がハゲる!? おそらく、あなたもなっている、無自覚難聴とは?
“有毛細胞の毛”は、頭髪と同じように加齢に伴ってハゲて薄くなっていきます(ただし、頭髪ほど毛量に個人差が無いと言われていて、男女差もほとんどありません)。毛が薄くなってしまうと、有毛細胞が機能しなくなりますから、結果として、周波数分解能が落ちてしまいます。