幽霊はいきなりやって来る。人とのしがらみも関係なく、遠方だってすぐ駆けつける。出し入れ自由の便利な存在、それが朝ドラ幽霊だ。そして幽霊はいつも生きている者にやさしい。
今回の安隆も娘・音に「俺は音の歌が大好きだ。また絶対歌いんよ」と告げ、妻・光子(薬師丸ひろ子)とダンスを踊り、作家志望の末娘・梅(森七菜)に温かなエールを送り消えていく。
たとえ死んでも、幽霊は家族を見守っている。「ナレ死(死ぬシーンが描かれることなくナレーションのみで語られること)」なんて言葉があるけど、そもそも朝ドラって死んだばあちゃんや母さんがナレーションしてるからね。朝ドラとあの世は地続きなのだ。
ところで安隆の幽霊。頭に三角の布&白装束の正統派「うらめしや」仕様だったけど、たしかクリスチャンだったよね。教会通ってたよね。どこをどう間違えてYOUは閻魔(えんま)様のいるこちらのあの世へ? え? まさかの隠れキリシタン?
※週刊朝日 2020年7月3日号