1日4時間以上を、ヒョンビンに使っている。韓流ドラマは1話が1時間をたっぷり超え、1作16話が標準。でも苦にならない。それが沼。185センチの鍛えた体に、整った顔を見ているだけで、沼から出る気にちっともならない。はまって気づいたのが、彼の出演作はほぼすべて「大人同士のラブストーリー」になっているということだ。

 彼の年齢に合わせ、アラサーからアラフォー同士と、恋する2人の年齢も上がっている。あ、ちなみにですが、59歳です、わたくしってば。だからアラサーよりアラフォーの恋愛だし、アラフィフならなおさら、と思われるかもしれないが、そうでもない。年齢よりも“大人度”が問題なのだ。「自立した男」と「自立した女」だから、ハマっている。女性がカッコいいから、ヒョンビンもカッコよくなる。胸キュンの好循環だと思う。

 と、沼語りが長くなった。やっと「東京ラブストーリー」の話をする。元はといえば1991年、鈴木保奈美と織田裕二が主演、最終回に32.3%という視聴率を記録した伝説の月9ドラマだ。それを29年ぶりにリメイクし、テレビでなくネットで配信する。フジテレビの起死回生策とまでは言わないが、意欲が感じられる。

 全11話を2日で見た。ヒョンビン沼から、令和の東京の愛を整理するにあたり、沼のドラマがなぜ切ないのかを考えた。切実、という言葉が浮かんだ。

「愛の不時着」が描いたのは、38度線をはさんでの愛だ。ユン・セリを守り、南へ帰す。愛するからこそだが、それが成就すれば別れになる。そんなのっぴきならなさが全編を覆っている。だから切ない。「シークレット・ガーデン」は財閥の御曹司と貧しいスタント・ウーマンの愛を描く。階級の違いを越えて愛し合う2人だから、ピュアさが強調される。こういう切実の構図は韓流の持ち味でもあり、アドバンテージでもあるだろう。

「東京ラブストーリー」が描いたのは、男と女の揺れる心だった。主人公は大手広告会社に勤める男女2人。地元の愛媛支部から転勤してきた永尾完治(織田→伊藤健太郎)と、赤名リカ(鈴木→石橋静河)。初対面から永尾に一目惚れしたリカが、ぐんぐん迫る。でも永尾は、高校の同級生で保育士の関口さとみ(石井杏奈)が好き。リカとさとみ、性格のまるで違う2人の間で揺れる永尾。

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