新型コロナウィルスの影響でドラマの撮影が次々と休止に追い込まれる中、スタッフや俳優の工夫により、それぞれが離れた場所で撮影する「リモートドラマ」が制作された。AERA 2020年7月6日号に掲載された記事で、リモートドラマの魅力と可能性を紹介する。
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俳優・吉田羊さんが自ら企画にかかわって実現したリモートドラマが、「2020年 五月の恋」だ。撮影の自粛が続くなか、「お芝居で日本を元気にしたい」と思った吉田さんがWOWOWのプロデューサーに相談、一気に話が進んだ。吉田さんの思いに賛同した俳優の大泉洋さん(47)、脚本家の岡田惠和さん(61)によるチームが組まれ、1週間ほどで脚本が完成。5月22~24日にリハーサル、25~28日に撮影、28日の夜には第1話がYouTubeとWOWOWメンバーズオンデマンドで放送された。
物語は2020年5月、離婚して4年経った元妻・ユキコ(吉田)に元夫・モトオ(大泉)がうっかり間違い電話をしたことから始まる。スーパーに勤務しているため自粛するわけにはいかないユキコと、在宅ワーク中のモトオは、まさに今年5月のリアルを表現していた。
撮影は吉田さん、大泉さんがそれぞれ別のハウススタジオに入り、実際に電話をしながら行った。吉田さんはこう振り返る。
「電話を通しての会話劇なので、演じる上での不都合はありませんでした。ただ、顔が見えない分、台詞の間合いは受話器から聞こえる相手の息遣いや空気の軽重が非常に大切なヒント。共演経験があり、間合い呼吸を読むのに長けておられる大泉さんだったから成立したのだと思います」
過度な編集や音楽を使わず、純粋に芝居だけで見せる。俳優にとっては怖くもあり、挑戦し甲斐のある作品だ。放送後、吉田さんの元には多くの俳優仲間から、続々と感想メールが届いたという。
「多くが『二人が自然すぎて芝居に見えない、どんな方法で撮っているのか』というものでした。価値観が大きく変わる今、今後も変化を恐れずにワクワクできるものを発信したい」(吉田さん)