春ドラマの中で唯一、リモートで新作を撮ったのが「家政夫のミタゾノ」だ。TOKIOの松岡昌宏さん(43)演じる、超人的プロ家政夫の三田園薫が派遣先の家庭に隠された秘密を暴く人気シリーズ。4月上旬から撮影ができなくなり、今年4月からはじまった第4シーズンは、5月1日の第2話放送後、一旦新作の放送を休止した。同番組のプロデューサー、秋山貴人さん(34)はこう振り返る。

「ミタゾノは時事的なテーマを盛り込んできたドラマ。4月末、緊急事態宣言が長引きそうだったので、この環境の中でできることを模索した方がミタゾノらしいと思ったんです」

 やるからには通常回と遜色ないものにしたい。リモート撮影ではカメラの寄り引きができず、画づくりに変化がつけにくい。そこを逆手にとって、あえてパソコン画面の中だけで展開することにした。

「特別編」と題されたリモート回では、外出自粛期間中にやむを得ず大阪へ出張することになった男性(音尾琢真)の留守宅に、三田園が家政夫として派遣される。男性のパソコンの画面のなかで、テレビ電話やウェブ会議ツール、LINE風のトーク画面などがせわしなく立ち上がり、妻や愛人も登場。そこに三田園がジワジワと入り込み、秘密を暴いていく。

 通常のドラマ撮影は、スタッフが50人近くになる。それを10人程度に絞り、監督はビデオ会議ツールで演出の指示を出す。主演の松岡さんやメインゲストは遠隔操作ができる小型カメラで撮影し、他の出演者には自宅や事務所でスマートフォンで自撮りしてもらった。

「録画したはずのデータがなかったり、途中からなぜかスローで録画されていたり(笑)。音声トラブルはしょっちゅう。技術的な面では、たえず問題が発生していました」(秋山さん)

 だが、5月29日に放送されるとSNSなどで「神回!」と反響を呼んだ。松岡さんとは「いい挑戦ができた」と喜びあった。秋山さんはリモートドラマの可能性も感じたという。

「今回の試みは、3、4年前のネット環境ではできなかったかもしれない。今後技術がさらに進化すれば、ハイクオリティーなCGを使ってロケ現場に行かずに撮影できるなど、表現の幅が広がる。今までのドラマの歴史の延長線上じゃない、新しいジャンルとしてリモートドラマが存在する気がします」

(ライター・大道絵里子)

AERA 2020年7月6日号より抜粋

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