自身のYouTubeチャンネルでは「とんねるずの大きい方」という肩書きの石橋貴明(C)朝日新聞社
自身のYouTubeチャンネルでは「とんねるずの大きい方」という肩書きの石橋貴明(C)朝日新聞社
YouTubeチャンネル『貴ちゃんねるず』より
YouTubeチャンネル『貴ちゃんねるず』より

 とんねるずの石橋貴明が、自身のYouTubeチャンネル『貴ちゃんねるず』を開設したことが話題になっている。いまや芸人がYouTubeを始めるのは珍しいことではなくなった。雨上がり決死隊の宮迫博之やTKOの木下隆行のように、何らかのトラブルを起こした芸人がYouTubeという新天地で再起をはかる例もある。

【暇で始めたという石橋貴明のYouTubeチャンネル『貴ちゃんねるず』はこちら】

 ただ、芸人YouTuberが増えたとはいえ、極端に上の世代の芸人はめったにいない。具体的には、石橋と同世代かそれ以上のキャリアで本格的にYouTubeをやっている芸人はほとんどいないのが現状だ。タモリ、ビートたけし、ダウンタウン、ウッチャンナンチャンなどはいずれもYouTubeには手を出していない。

 数少ない例外として、ヒロミは『Hiromi factory チャンネル』というYouTubeチャンネルを持っている。ただ、そこで行われているのは、DIYや自動車・バイクいじりなどの個人的な趣味に関することばかりで、笑いやエンターテインメント性を重視した内容ではない。本格的に芸人としてYouTubeに根を下ろして活動する人は、ベテラン層ではまだ前例がない。

 そんな中で、文句なしの大物芸人である石橋のYouTube進出は大きな話題になった。始めた途端に登録者数は急増し、7月2日現在で52万人を突破している。

 制作を手がけているのは『とんねるずのみなさんのおかげでした』でも演出を務めたマッコイ斉藤だ。テレビバラエティ史に残る数々の過激な企画で知られる伝説のテレビマンである。そんなマッコイと石橋ががっぷり四つに組み、満を持してYouTube進出を果たしたのだから注目されるのも当然だ。しかも、石橋は「1年やってダメだったら引退する」とまで宣言している。背水の陣で挑む覚悟なのだ。

 彼がYouTubeを始めた背景には、テレビに代わる新しい表現の場を切実に求めているという事情があるのではないか。2018年に『とんねるずのおかげでした』が終了して、とんねるずのコンビとしてのレギュラー番組はゼロになった。その後、石橋だけは同じフジテレビの深夜枠で冠トーク番組を持っているが、現在のレギュラー番組はその1本だけだ。YouTubeで公開された動画の中でも、自分が暇だということを自虐的に語ったりしている。

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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