その方法はやはり、炭水化物や糖質、脂質を避け、低カロリーにこだわるというもの。ランチが紙コップ1杯分のこんにゃく麺だったり、夜ごはんは「豆乳」だったり、仕事場にはもやしや寒天、豆腐を持参したりと、涙ぐましい節制を重ねた。
そのダイエットには「痩せたら推してもらえる」というアイドルらしい動機が。実際のところ、痩せたことによる反応は賛否両論だったが、握手会などに来るファンはおおむね好意的な言葉をかけることになる。それが、彼女の心にこんな変化をもたらしたという。
「アイドルの場合は面と向かって言われることがすごいあったからさ。痩せてかわいくなったね、もうれしいけど言い過ぎるのは良くないと私は思います。私の場合はね。痩せてかわいくなったねがもはや脅迫みたいな、私が太ったら推し変するんやろうとか、私が太ったら干すんやろとか、そっちのメンタルになっちゃってたから」
本来、承認欲求の満足にもつながるはずのダイエットが必ずしもそうならず、かえって苦痛をもたらしていたというわけだ。
なお、彼女のこの動画投稿については、モー娘。の現役ファンのあいだから、メンバーがみな、こういうダイエットをしているような誤解を生みかねない、という声も聞こえてきている。それはもちろんその通りで、AKB系や坂道系だって、島崎のようなダイエットをする人は一部にすぎないだろう。
ただ、その一部と他の大部分が、完全に分断されているわけではない。アイドルたるもの、痩せた太ったは大なり小なり共通の関心事だし、もっといえば、世の一般女性にとってもそれは同じはずだからだ。アイドルの場合、自分磨きの重要性やグループ内での競争意識、ファンからの評価といった独特の構図がそれを見えやすくしているだけで、体形のありようが承認欲求を左右しやすいのは世の女性全体の傾向といえる。
だからこそ、冒頭のミイヒや本田仁美の激痩せについて、あれこれ気にしているのももっぱら世の女性たちなのである。アイドルが痩せたり太ったりすることに、自分たちの世界と地続きの普遍的な意味を見つけて、ざわつくのだろう。
そういう意味で、アイドルの激痩せは当事者のみならず、現代女性が抱えるアイデンティティーの危うさをも体現している。アイドルは鏡のように、時代を映し出すのだ。
●宝泉薫(ほうせん・かおる)1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』エフ=宝泉薫名義の『痩せ姫 生きづらさの果てに』など。