林:ほぉ……。ところで、次回作はもう決まってるんですか。

角川:今度はコメディーで行きたいと思ってる。今度は監督じゃなくて、製作者として。

林:このごろはコロナの自粛でDVDを借りて見ていた人が多いみたいで、角川映画がまた話題になってますよね。「犬神家の一族」(76年)とか「人間の証明」(77年)とか。

角川:私が製作した「復活の日」(80年)は、英語版のタイトルが「ウイルス」というんだよね。それが今やたらユーチューブで流れたり、大友克洋君の漫画『AKIRA』はコロナを予言していた感じで……。

林:私も「復活の日」は覚えていてびっくりです。話が変わりますけど、私が若いときに読んだ本で非常に感動した本があって、モーツァルトとバッハとビートルズを愛した25歳の女の人が死んでしまって……。

角川:ああ、『ラブ・ストーリー ある愛の詩』ね。

林:私、山梨県の高校で放送部に入って、朗読コンクールであれを朗読してたんです。最近初めて知ったんですけど、あの本、社長が翻訳されたんですって?

角川:そうです(筆名は板倉章)。角川文庫は当時「キネマ文庫」と言われるぐらい映画の翻訳ものを多く出したんだよね。全部自分の企画でね。紀伊國屋のベスト10で1位から10位までの独占を何週間も続けたりして大成功した。

林:角川春樹社長というと、角川書店の御曹司で、何でも好き放題のことができたのかと思ったら、本を読むとぜんぜん違うんですね。窓際に追いやられたりして。

角川:そう。でも、翻訳もので成功したので、そのあとは日本の作家を担当して、これまたベストセラーを連発した。それでカムバックへの道が開けてきたわけだ。

林:そこから怒濤の角川時代が始まるわけですね。

角川:父(角川書店創業者・角川源義氏)が結核で清瀬の東京病院に入院したんだけど、そのころ石油ショックで紙の値段が毎日上がっていた。父に「こういうときは自粛して慎重にやるように」と約束させられそうになったけど、それまで勘当を3回ぐらい食らってるから、かぶりで「はい、わかりました」と言って、逆にどんどん攻めたの。

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